第4話 「努力のできるあなたが、好き」「SNSで友達にラインを送れる目をもつよりも、努力のできる目をもつほうが、好き」って、言われたら?

「…お母さん」

 「少なくも、お母さんは、SNSで友達にラインを送れる目をもつよりも、努力のできる目をもつほうが、好きだけれど?」

 そうか。

 母親は、こういう目のほうが、好きだというのか。

 「レイカ?」

 「うん」

 「小さい画面とか、見すぎちゃったんじゃないの?」

 「…」

 「ゲームの、しすぎ?」

 「かも」

 「ランドルト環が慌てるほど、視力が、落ちたわけ?」

 「らんどると…?」

 「ランドルト環、です」

 「何、それ?」

 ランドルト環っていうのは、視力検査で見る、アルファベットのCの形をしていた輪のこと。

 ランドルト環には、上下左右のどこかに、穴が開いていた。健診表の、下にいけばいくほど、輪は、小さくなっていく。

 「レイカさん?どちら側に、穴が開いていますか?」

 ランドルトっていうのは、人の名前。パリで活躍した、スイス出身の眼科医の名前らしい。

 小さな子どもでも、楽しんで眼科検診にきてもらえるようにっていうことで、ドーナツの絵を描いていたのかと、勘違いしていた。

 白黒ドーナツとかって、呼んでいた、私。

 私、おバカだったよ。

 「あのね、お母さん?」

 もう、告白するしかないよ!

 アオハルな感じ、まるでなし。

 「お母さん?私、告白します!」

 「何?」

 「私、バカだった」

 「うん。そうね」

 「…」

 結局は、瞬殺なのか。

 「レイカ?がっかり気分なんて、よく、あることなんじゃないの?」

 いや。

 よくあっては、困る。

 「参ったなあ…」

 世界的なウイルスは、ゆるやかになったかと思えば、復活。

 学校には、また、いけなくなっちゃった。

 つまらない、日々。

 「努力のできるあなたが、好き」

 こういう状況で、どう、努力できるんだ?

 「ねえ、お母さん?」

 「何ですか?」

 「コンビニのイートインコーナーに、いってくる」

 「仕事?」

 「…仕事といえば、仕事」





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