第3話 愛の言葉。「不便ではあるかもしれないけれど、かわいそうじゃない。大切なのは、視力を落としてでも、努力をして、生きていくこと」

 「JK、視力検査と、戦う」

 ひらがなを読ませる検査に、移った。

 「これ、何という字ですか?」

 字でしょ?

 平仮名なんでしょ?

 それくらいなら、わかりますよーっだ。

 ハイスペックなJKを、甘く見るな!

 「…わかりません」

 瞬殺。

 あの、視力を測るドーナツの輪のどちら側に穴が開いているのか当てる戦いなら、確率4分の1で、勝てた。

 でも、平仮名を読んでくれっていうんじゃあ、無理。

 どんだけの、確率だよ。

 「それでは、レイカさん?」

 「ほええ…」

 「乱視の検査を、してみましょう」

 「ほい…」

 パラパラと、点線が、放射状に広がる円を見る検査。

 「レイカさん?」

 「うう」

 「レイカさんは、近眼が進んでいますね」

 だろうね。

 「レイカさんには、乱視も、あります」

 乱視?

 「メガネを、作ってみましょうね?」

 「先生?」

 「はい」

 「作れば、良いんですか?」

 「作った後、目に、かけてください」

 だろうね。

 健康診断での、JK…。

 視力の白黒ドーナツに破れ、心、折れました。

 「ねえ、お母さん?」

 「なあに?」

 「視力が、落ちちゃった」

 「はい、はい」

 「…落ちすぎ」

 「学校にいかなくなって、生活が、だらけすぎたからでしょう?」

 「やっぱり、そうなのかなあ」

 「アイドルになるための書類審査に、選抜イベントがどうのこうので、騒ぎすぎたんじゃないの?」

 「ちょ…。それ、勝手に進めたのは、お母さんじゃないか!」

 「お母さんたちの時代なら、自己責任ですねって言われて、終わり」

 「…」

 「あのね、レイカ?」

 手を上げられるんじゃないのかと、覚悟した。

 が、そんなことは、なかった。

 不思議なことを、言われてしまった。

 「大切なのは、視力を落としてでも、努力をして、生きていくこと」

 「…うん」

 「不便ではあるかもしれないけれど、あなたは、かわいそうなんかじゃないんです」





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