昼
君が
斬る声(斬られる声)、刺す声(刺される声)、撃つ声(撃たれる声)。
押し倒す声に、引き倒す声。
鬨の声に、掛かる声。
怒声に罵声、悲嘆の声に、怨嗟の声。
溢れる音は(声は)波であり、だから当然その集合も波であり、その大元もまた波を成す。
幾千の、幾万の音が(声が)――だから幾千の、幾万の人が(人々が)。
波濤を成し、互いに襲い掛かる。
すでに衝突は
それほどまでに、溢れている。
音で、声で、人で、人々で、溢れ返っている。
そして、結論する。
まだ早いのではないか?
衝突はまだ小規模で、まだ
先駆けの将兵ならばともかく、まだおれの、そしてなにより君の、出番には、まだ尚早だ。
君がおれの様子に気づいて言う。白く細い喉を震わせて。
そう、まだまだ早いのだけど、と。
悪いけど、目を覚ましてもらったの、と。
君は胸下までかかる髪をさらりと手櫛で揺らす。
君の起こした揺れが(つまり波が)ヴェールに隠れた目元の辺りに至る。
まばたきをひとつ。円く大きな瞳が揺れ、長い睫毛が跳ねるように揺れる。
そのすべてが、光を吸い込むように黒い。
刺繍に彩られた
くろぐろと、ゆらゆらと、影のように(影もまた)揺れている。
君は戦場を眺めている。
時が来るのを待っている。
音は、声は、人は、その
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