第五面 上の者たちの場合

 丸いテーブルを囲む少年と少女たち。最初の駒が崩れたことで、ある美しい少年が酷く悔しがった。別の少年は、一番駒を進めていたその子の駒が崩れたことを大喜びした。

「俺の駒はさっきやられたんだから、いいだろ! あーあ、全然進まねーよ」

 強気な少女は次こそは自分の駒を進めるべく、駒の強化に勤しんだ。

「私の駒は次は失敗しない、絶対に」

 それぞれがそれぞれの駒について一斉に話し始め、騒がしくなる。

「僕の駒が一番進んでたのに。やり直しだ。次はどんな駒を創ろう……それにしても、母や子を求めるこのゲームは少々趣味が悪いかもしれないね」

 美しい少年はそう言うと次の駒を考えようとしたが、何故だか少し体に疲れを感じていた。そんな少年を見て、少女は嘲笑うように言った。

「幸せな家庭を求めるゲームの何が悪いの? 昔からあるゲームでしょ」

 少女は美しい少年の返事を聞かずに、駒を次のマスに進めた。






「せっかく美少年を勝たせていたのに、悔しいじゃないか」

 何かが言った。

「美しいものだけが勝つとは限らない、どんな遊びもね。見た目で選ぶなよ、知能をどれだけつけられるかが鍵なのだから。さ、カードを変えてもいいんだぞ」

 違う何かが言った。

「では、カードを変えようか……」

 何かは落ち込んだ様子で美しい少年のカードを消し去った。

「なあ、この戦争はいつ終わると思う」

 別の何かが笑いながら何かに問いかけた。

「……そんなもの、わかるものか」

 何かは新しいカードを選びながら答えた。そして、続けてこう言った。

「おかしいな。なんだか、酷く疲れたよ。きっと、この戦争が長いからだな」

 程なくして、何かは戦いに出向いていった。






 

 自分の世界こそが真実であり、信じるべきものである。そう思うべきなのだ。そう思う他ないのだから。


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プレイ 紺道ひじり @hijiri333

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