第二面 少女の場合
夏休み初日の朝。夏休みは嬉しいがまた作らなければならないかと思うと、少女の気は重かった。クラスの子は優しくなったとか、料理が上手くなったとか、成功したことを自慢げに話していたが、少女はどうにもうまくいかなったのだ。
「おはよう」
少女はリビングにいる母親に挨拶をした。だが、母親は冷たい声で言い放った。
「今テレビを見ているのがわからない?」
少女はその言葉を聞くと、近くにあった花瓶を母親に振りかざした。母親はバラバラと音を立てて崩れていく。
「もう、何が悪いのかしら、何が……。早く成功しないと、時間ないのに」
焦った声で少女はパズルのピースをはめていく。
「これかな、瞳の色かしら。黒じゃなくて、水色とかどうだろう」
少女は両目のピースをよけると、新しいピースに水色を塗り始めた。きっと次こそは上手くいく、上手くいくわ、と言い聞かせながら。
少し時間が経つと、少女はパズルを完成させた。母親は勢いよく立ち上がると、少し目をこすってから言った。
「ダンスでもする? この清々しい朝に! ねえってば!」
ああまた間違えた、と少女は頭を抱えた。母親は楽しそうにステップを踏んでいる。花瓶をまた手に取り、少女は少し泣いた。
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