オレの本音

 高世は続ける。

「このことも含め、応援歌練習には数多くの不可解なしきたりが存在します。靴紐の色が違うだけで裸足にさせられる、発声練習のはずなのに10分以上大声を出させられる、指導してる側の声の方が小さいのに自分達のことは棚に上げて、私たちばかり罵倒する、など。みなさん、これは本当に正しい応援でしょうか。私は違うと思います。応援っていうのは頑張っている選手を見て、全力を出して欲しいという思いからつい口から出ちゃったものであると私は解釈しています。何も思わずにそんなことを言えるはずがないからです。そしてこれが最も肝心と思いますが、応援歌練習が今なお続いているのはこれが『伝統』だからです。『伝統』ってなんなんでしょう?辞書に意味は書かれていますが、私はあえて別の解釈をしたいと思います。『伝統』が何で続くのかって言ったらその伝統の内容だけじゃなく、その根底にある想いに共感する人がたくさんいたからではないかと考えています。では今の応援歌練習はどうか。『伝統』だからという形式ばった理由だけで続いていないでしょうか?」

2、3年生の大半が頷く。

「もちろん、私の意見が絶対に正しいとは思いません。別の考えを持つ人だっているはずです。だから今日、みなさんには集まってもらいました。形式的ではなく、心の奥底でみなさんが真に望むものをさらけ出してほしいと思います。今後の私たちの高校の応援はどう在るべきなのか、それを決めていければいいなと願っております。本日はみなさん、よろしくお願いします。以上です」

 盛大な拍手と共に高世のスピーチは終わった。

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