決戦の日
高世にとってその日以上に緊張した日が16年の中であっただろうか。生徒総会当日である。すでに生徒は全員会場のアリーナに出席している。司会進行役は水野だ。彼女の点呼を受け、全体の三分の二以上の出席が確認され、総会は無事に成立した。この日の議題は来年度の予算案、授業デジタル化の進捗状況等だった。慎重に議論され、途中で休憩を挟み、最後の議題に到達した。水野が言った。
「それでは、本日最後の議題となります。『応援歌練習は続けるべきか、否か』についてです。」
教職員の間でどよめきが起きた。そんなことが始まることを事前に知らなかったのだから無理もない。
「おい!そんなこと聞いてないぞ!」
立花が声を上げた。会場が静まったが、
「言い忘れてました。申し訳ございません」
渡瀬がマイク越しに言った。
「しかしながら、この議題は事前の調査によって全校生徒から承認されております。生徒の皆さんの中でこの議題の審議に承認いただける方は拍手をお願いします」
全生徒から万雷の拍手が起こった。立花は顔を真っ赤にし、
「ふざけるな!そんなこと認めないぞ!今すぐ中止しろ!!」と吠えた。
「立花先生、それ以上会の進行を妨げるようならご退場願います」
渡瀬がそういうと全生徒が立花に鋭い一瞥をくれた。これではさすがの立花も黙るほかない。水野は意に介さない様子で続ける。
「では改めて議題の審議に入りたいと思います。まず、我々生徒会本部の所見として、この議題を提案した高世紗雪さんより演説をさせていただきます。それでは、高世さん、どうぞ。」
そう言うと、舞台脇に控えていた高世が立ち上がり、ステージに向かって歩いていく。全生徒がそれを静かに見守っていた。やがて高世はステージの中央に立ち、自分を見つめる1000人以上の生徒へ深く礼をした。マイク越しに高世は
「おせぇよ!」と第一声を放った。生徒たちは静かにそれを聞いている。
「それが私が最初に言われた一言でした。何が遅かったのか、私はずっと考えましたが、答えは見つかりませんでした。皆さんも同じ経験をしたことだと思います。」
多くの生徒が頷いている。
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