Round2
高世が思いを新たにした次の日、高世はもう一度生徒会室に向かった。前回の件を受けてさらにブラッシュアップした提案書を携えて。生徒会室のドアを開け、「会長いますか?」と大声で言うと、「はい」と奥から渡瀬が返事した。見ると渡瀬はパソコンと向き合いながら仕事を進めていた。渡瀬は立ち上がり、来客用の椅子を勧めたが、高世は座らず、真っ直ぐ直立の姿勢で渡瀬を見ていた。
渡瀬は不思議そうに言う。
「座らないんですか?」
高世は元気よく「はい!!」と言った。
「君もしつこい人ですね。何度来ても結果は…」
「会長の過去、聞かせていただきました」
渡瀬は言うのをやめ、不審の眼差しを向けた。
「何を言っているんだ、君は?」
渡瀬が言うと、高世は一通の書類を差し出した。それをみた途端、渡瀬は、動かなくなった。渡瀬が高校1年の時に高世と同じことをやろうとしていたことを詳細に記録したレポートだったからだ。
「何が言いたい?」
しばらくして渡瀬は言った。
「この話を聞いた時、私は会長に脱帽しました。将来の高校生のために自分の信念を殺してまでやろうとしていた覚悟を。自分なんかじゃ到底会長には及ばないと悟り、正直、抗議もやめようかと思いました。」
渡瀬は黙って聞いている。表情を見れば、彼が不快感を抱いてるのは一目瞭然。
「でも、そんな俺にあいつが、友達が言ってくれたんです。『本当に大事な覚悟ってのは己の信じた正義のために最後まで道を貫くことなんじゃねぇのか』って。それを聞いて気づきました。会長、確かにあなたの理想は素晴らしい。ですが、そのために自分と同じ志を持つ者を排除することが本当に正しいことなのでしょうか。その同志たちと一緒に戦うべきなんじゃないんですか」
「そんなことは僕も分かってる!!」
それまで黙っていた渡瀬が吠えた。
「でもな、いくら生徒が喚いたところでどうにもならないんだ。確かに教職員の言う『理不尽を耐える』と言う言葉の意味もこの2年で僕も多少理解している。何より…君も知ってるだろ、この応援歌練習に賛成しているのは教職員だけじゃない。いや、そもそもこれを作ったのはこの学校を設立した十川家なんだぞ?そんなところに抗議したら、最悪の場合、この高校は閉校しかねない。そしたらここに在籍する生徒1000人以上が離れ離れになるんだ。せっかくここまで仲を深める活動をしてきたというのに。それを水の泡にするわけにはいかない!」
それは渡瀬の心の叫びに違いなかった。目に涙を浮かべながら悔しそうに彼は言った。高世は渡瀬の言い分を聞き、なおこう告げる。
「確かにそうなることも考えられます。ですが、会長。やってもみないうちからそう頭ごなしに否定していてはうまくいくものもいかないと思います。成功するかどうかは会長の心次第なのではないですか?真の心を持ち、それを目指して行動できればやれるはずです!それに、会長が卒業してから応援歌練習を変えることができるようになったとしても、その時、同じような考えを持つ生徒がいなかったら結局変わらないじゃないですか!」
渡瀬は、はっ、となる。高世は続ける。
「何かを変えるためには誰かからの賛成が必要です。生徒全員からの信任を受けている生徒会の長であるあなたがやる気になれば、生徒もあなたについてくるはずです。だから、会長。一緒に戦ってみませんか?」
「だが、僕は…」
渡瀬は苦悩する。
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