迷宮入りの迷路?
高世が思いを新たにしていた頃、生徒会長の渡瀬もまた、1人苦悩していた。
(自分は今まで理想を実現するために、悪魔に魂を売ることもいとわなかった。なのにどうして僕は…)
彼が振り返っていたのは先日の教務主任立花とのやりとりだった。高世が来室してから渡瀬の中には迷いが生じていた。
(自分は本当に正しいことをしているのだろうか。仮に僕がOBになってから変えられたとしても僕と同じ意識を持つ者をこうやって退けていては、また、誰かによって歪められてしまうのではないか?)
そう思った渡瀬は立花のもとに行ったのだ。自分の懸念、思いをもう一度立花にぶつけた。だが、
「こんなこと何度も言わせんなよ、渡瀬」
立花はうんざりそうに言った。
「言ったよな、お前が応援歌練習を率先して卒業生に披露すれば、お前が卒業した後、応援歌練習を変えてもいいと。」
「確かに先生はそうおっしゃいました。しかし、それでは時期が遅すぎる気がするのです。こう、危機意識を持つ生徒たちを退き続けては…」
「お前、俺に意見するのか?」
立花の表情に影が差した。それを見て渡瀬が息を呑む。
「これ以上俺に歯向かうようなら、こっちにも考えがあるんだぞ?渡瀬。お前との取引は反故にし、お前を会長の座から引きずり下ろすことだってできるんだ。どうだ?そうしてみるか?嫌だよなーせっかく自分の理想のために我慢してきたってのにそれを水の泡にするなんてなぁ!」
この男の狙いは端からそれだったのかもしれなかった。
「だったら、黙って俺に従え。お前は何も考えずに俺の言うことだけ聞いていればいい。俺ももう少しで定年なんだよ。ここで波風を立てず、最後は有終の美を飾っておさらばしたいんでね。」
渡瀬は口を閉ざし、ただ「…はい」と返事をしてその場を後にした。
(僕は一体…)
渡瀬は答えのない迷路をずっと彷徨い続けている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます