心機一転

 どれだけそうしていただろう。高世はずっと俯いたまま動かなかった。

「紗雪?」

 翔が声をかけた。動かない、と思ったその時、勢いよく高世の頭が上がり、その反動で後退りして電柱にぶつかった。「ゴーン」という音が響き渡る。

「イッテェー!」

 高世は叫んだ。翔は驚いた様子で、

「大丈夫か?紗雪」と声をかけたが、答えない。しばらくして

「ありがとな、翔」と言った。

「ん?」

 翔はポカンとしている。

 高世は明るい表情で翔に言った。

「お前のお陰で振り切れた。そうだな、俺は俺の道を行く!」

 そこにあったのは未来を信じる者だけが持つ最高に輝いた高世の瞳だった。

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