初対面


 翌日、高世は朝一番に生徒会室に向かった。かねてから準備していた提案書がようやく完成したのである。生徒会室の扉の前で深く深呼吸して、

「失礼します」

 高世は入っていった。

「本校の学校行事について1つ提案したいことがあるのですが、会長はいらっしゃいますか」

 天下高校は学校に関わること全て会長が管轄するのがしきたりなのだ。

「はい」という返事と共に1人の男子が視線をこちらに向けた。生徒会長 渡瀬悟その人である。来客用の椅子をすすめ、互いに向かい合った。

「実は本日お伺いしたのは応援歌練習についてでして。…」

 高世は自分の提案を要領よく説明していく。だが、

「ちょっと、それは難しいですね」

 最後まで聞き終わらないうちに渡瀬がそう言ったのである。

「いや、しかしですね、」と高世が反論しようとするのを遮り、

「あなたのおっしゃっていることは分かりますよ。ですが、それが本校の伝統ですから。意味がないと言うのであれば、その意味を見出すのも貴方方新入生に与えられた試練でもあるのですから。そこをお忘れなきよう。お引き取りを」

 そこで話は終わった。

 何も実りがない交渉だった。高世は肩を落とした。だが、

(そもそもなぜ会長は俺の説明に無表情だったのだろう。普通なら何かしらの反応が返ってくるはずなんだがな…)

 違和感を感じた高世はその後、学校運営に携わる地域の人や渡瀬のクラスメート、保護者に話を聞き、教務主任立花から渡瀬が話を聞いたというのを掴んだ。でもだからって、素直に従うか、という高世の素朴な疑問に関係者の1人が口を開いた。

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