優等生の知られざるpast

 渡瀬はかつて高校1年の頃、今の高世と同じように応援歌練習を変えようと動いていた。だが、それは当時の生徒会長によってすぐに潰されてしまった。しかし、なおも納得のいかない渡瀬が調べていると、当時の生徒会長がまだ学年主任だった立花の腹心であることを突き止めた。当然、渡瀬は憤慨したが、どうすることもできなかった。

 その年度末、渡瀬はそれまでの思いもあって生徒会長に立候補し、選挙の結果無事当選したのだった。その直後、立花からある提案を持ちかけられる。渡瀬が卒業してOBとなった後、もし望むのであれば、応援歌練習をやめてもいいと言ってきたのだ。ただし、来年度の3月に卒業生へのはなむけとして、応援歌練習を彼らに見せると言う条件付きで。渡瀬は迷った。自分が散々嫌悪してきた応援歌練習の指揮を取ると言うのか。だが渡瀬は受け入れた。そうしない限り、変えることはできないと確信したからだ。その望みを成就するために渡瀬は応援歌練習に対する抗議をことごとく退けてきたということだった。

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