思い知る『理不尽』


 「おい、おせえんだよ!早く来いって担任から言われたよな!なんで早くこねぇ!?」

 先輩たちの罵声は5分以上続いた。高世はそれを聞いて内心イラッとしたが、すぐに応援で目に物見せてやるというやる気が湧き上がる。そして応援練習開始の合図がかかり、これで高世の願いは成就…しなかった。発声練習の名目で十分以上大声を出させられたのである。

(こいつら、何考えてんだ?こんなことしてたら、いくら俺でも声が枯れちまうぞ?)

 応援歌練習は意味不明な発声練習を起点として30分間罵声の世界を1週間作り続ける。応援歌を覚えていないものは全員の前で罵倒され、靴の紐の色が学校規定の物でない生徒は裸足にさせられ、たとえ歌っていても声の大小にかかわらず「声が小さい!!」と怒鳴られる。結局のところ、全員何かしら「裁き」を受けるのだ。それを高世はただひたすら何も言わず、黙っていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る