故郷 (その他)
ペリとさよならした日の甲板で
「しかしなあ、
来なくなって三十年ぐらいか?いや、どれぐらいだったかな。」
「相変わらず万年青さんの話は訳が分からなくなりますね。」
「本当に万年青は不思議だよな。死んでないよな。」
「亡くなってはいないでしょう。
私、ちょっと万年青さんで考えた事があるんです。」
「なんだ。」
「フェニックスみたいなものじゃないかと。」
「不死鳥か。」
「ええ、前に死ねるなら死んでみたいね、とおっしゃっていたし、
時が来ると若返るんじゃないかなと思って。」
「そう言えばすごいお婆さんだったよな。」
「それで今ちょうど若返って赤ちゃんかもと。」
「赤ん坊の万年青か……。想像できんな。」
「分かりませんよ、でもちょうど万年青さんが来なくなった頃と、
白川さんや素鼠老さんがお山に帰った頃と一緒ぐらいですよね。」
「……そうだな。」
「あの人達が万年青さんのお守りをしていたりして。」
「ふむ。」
「あら、」
「
「ヒナトリと
ところで相変わらず仲の宜しい事で。」
「仲間外れにして悪かったな、お前も来い。」
「嫌ですよ。別のリクライニングで良いです。
ところで何の話をしていたのですか。」
「万年青の話だよ。お、」
「ああこちらに置いて下さい。注文しておきました。」
「気が利くなあ、お前、酒とつまみか。
あっ、ちょっと、君、さっきクマのスタッフさんから聞いたが……。」
「はい、やっぱり分かりますか。」
「何の事ですか、ヒナトリ。」
「彬史なら分かるだろう、このスタッフさんは普通じゃないって。」
「……ええ、まあ。」
「この人は俺達がお山にいた時に会った事のある物の怪の一人らしいぞ。」
「えっ。」
「はい、そうです。覚えていらっしゃらないと思いますが、
お二人にお会いしました。」
「そうなんですか、かなりの驚きですね。」
「良かったら君も飲もう。時間はあるかな。」
「はい、実は今夜はお休みをいただきました。」
「嬉しいですね、物の怪の方と飲み交わすのは初めてだ。」
「よし、あ、ちょっと待て、更紗、
静かだと思ったらお前もう勝手に始めやがって。」
「うふふ、美味しいです。」
「僕、追加注文してきます。」
「頼むよ。」
「お願いします。悪いですね。」
船旅は良いものだ。
したことないけど。
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