第2話 現実と妹
第2話
目覚めたら、身体中が痛かった。
動かそうとする度に、身体が軋む音がする。
一体、僕に何が………
「あっ、先生!夏川さんが目覚めました!」
「えっ、それって………」
周りを見渡すと、知らない天井が広がっていた。
でも、この薬品みたいな匂いは………
「もしかして、病院………」
「お兄ちゃん、無事!!!!!!」
そんな事を考えていると、慌てて先生を呼びに行った看護師らしい人と入れ違いに女の子が入ってくる。
勢いよく開けられたので、その音が響いて耳が痛い。
こんな事をする奴は一人しか居ない………
「亡、僕は大丈夫だから安心して………」
この子は僕の自慢の妹、
僕達家族の天使だ。
「大丈夫、何処が!?お兄ちゃんはモンスターに襲われて、此処に運ばれたんだよ!命に関わる怪我は無かったけど、27時間37分45秒も眠ってた上に、全身が筋肉痛になってるんだよ!?それの何処が大丈夫なの!?」
「ご、ごめん………」
そんなに寝てたのか、僕………
しかも、筋肉痛かぁ………
「道理で身体中が痛いし、あんまり動かせない訳だ………」
しかし、何で筋肉痛に?
あのモンスターにやられたのなら、筋肉痛所じゃ済まないだろうに………
………疲れたし、考えるのは止めよう。
後でゆっくり………
『そうやって思考停止するよは、お前の悪い所だぞ、俺。』
「えっ?」
慌てて周りを見渡すが、この部屋には亡と僕以外は誰も居ない。
もしかして、幻聴………
『違うぞ、俺。今の俺は、お前の中に居るからな。直接、語りかけてる訳だ。』
「へぇ、そうなんだ………って、何してるの自称僕!?」
えっ、アレ夢じゃなかったの?
並行世界の僕が目の前に現れるとか、『厨二病みたいな夢だなぁ………』って思ってたのに!!!
『失礼な俺だな、お前。まぁ、ナチュラルに失礼とかも昔言われたな、婆さんに。』
「婆さんって誰なの!?」
『婆さんは婆さんだよ。俺の嫁さんだ。可愛いし、歳を食った後は美しかった。老婆になっても俺はメロメロだったなぁ………。しかも、俺との子供を6人も作ってくれてさ。大家族に憧れてたから、滅茶苦茶嬉しかったのを覚えてるよ。』
「惚気と家族自慢とか止めてよ!誰もそんなの食わないよ!!」
『お前の事だぞ、俺。』
「そんな経験ない僕にとっては、唯の他人事だよ自称僕!!!」
でも、大家族か………
………羨ましいな。
『だろ?やっぱり、お前は俺だよ、俺。』
「………まだ信じられないよ、自称僕。だって、その口調は………」
………とっくの昔に捨てた物だ。
『お前もそうだったのか………』
「って、事は……君も…………」
「お、お兄ちゃん………!?」
中に居るらしい自称僕と話していると、亡が入り込んでくる。
………あれ?
もしかして、今までの状況って………
「どうして、誰かと会話してるみたいな独り言してるの?」
「あっ………」
やっぱりじゃん!!!
今の僕、凄いヤバい奴じゃん!!!!
ど、どうやって誤魔化そう………
『このままヤバい奴のフリをすれば良いんじゃないか、俺?』
(自称僕は黙ってて!!!)
「お兄ちゃん、可哀想………」
「えっ、亡!?」
『お前、亡に何をした!?いくらお前が俺だからって、妹を泣かす奴は許さねぇぞ!!!!』
そんな事言われても、何で泣いてるか解らないよ!
僕と自称僕が
そして、あまり動けない事を良い事に僕の頭を胸に持ってきて………
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。色々あって怖かったんだよね?だから、可笑しくなっちゃったんだよね?だから、妹の私に甘えても良いんだよ?バブみを感じてオギャっても良いんだよ?ほら、妹ママでちゅよ〜♪」
えっと、その………
(一言良い、自称僕?)
『奇遇だな、俺。俺も一言あるんだ………』
じゃあ、せ~ので言おうか。
(『何だ、コレ!!??』)
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます