第20話 こんな甘い雰囲気になったの初めてなんだが…
「で、どうするの?私がわざわざ背中を押してあげたんだから、もちろんそのまま押されてくれるよね?」
先に着替えが終わった俺はベットに座って制服をたたみながら、アリシアと生徒会について議論?をしていた。
「って、なんで背中を押したりなんかしたんだよ…俺まで入らなきゃいけなくなったじゃねぇか」
「だって、あからさまにやる気ありません!って感じだったもん。あの時のロワ。私もまだ転校してきたばかりだし、あまり友達作りとか得意じゃないから人員集めには向いてないんだよね。だからこそのロワだよ!」
「なんで俺なんだよ…」
「頼れる人がロワしかいないからに決まってるじゃん」
カーテンが開き、アリシアも着替えを終える。白のパーカーに、短パン。長い靴下と、短パンとの間にできた際どい場所に男子全員が数秒は視線を持っていかれるのではないのだろうか。もちろん、俺もその男子の一人なのだが。
しかも、なかなかに恥ずかしいことを何気なく言ってくる。発言だけでなく、今見えたもののせいでさらに羞恥が加速していく。
気づけば、今までにないくらい顔が熱くなっていた。
「あれ?もしかして照れてる?」
俺は両手で顔を隠すと、アリシアが覗こうと体を寄せてくる。
(あぁぁーー!畜生!相変わらず自覚がねぇなぁーー!!)
今さらだが、アリシアは自分がかわいいということと、少なくともうちの学年でモテていることに気づいていない。
いかにもツヤツヤ感が感じられる黒い長髪。しかも、見つめられると吸い込まれてしまいそうな真紅の目。
おまけに言っちゃ悪いが、胸もちゃんとある。身長は俺よりは下だけど女子としての身長としては十分だろう。
この前、クラスの誰かがアリシアは目測CかDカップくらいだと言っていたのを思い出すと余計に見ずらくなってしまう。
そんないいところしか持ち合わせていない
「ねえってば」
「照れてないから!」
「じゃあその手を取ってから言ってみてよ」
これ以上は無意味だと判断し、俺は羞恥の限界を突破するかもしれないということを承知で手を離した。
「やっぱり照れてるー!って、そんなことよりも今はー」
そう言って、アリシアが俺の膝に頭を乗せた。
俺はどうにかして急速に心を落ち着かせ、ポーカーフェイス状態に入る。さすがに今の状態でポーカーフェイスなしでは耐えられない。
「何年ぶりかのご褒美ターイム!」
「懐かしいな。昔、よく膝枕し合いっこしてたっけ」
いつも遊び終わったら、代わり代わりにしていた光景が頭に流れてくる。あのころは、まだ髪が今のように長くなく男として思っていたため、遊んだ思い出がたくさんある。
「なでなでして?」
「こどもか」
「こどもです!」
「はいはい。そんなお子ちゃまにはなでなでしてあげましょー」
「やったー!」
棒読みトークだが、俺は左手でアリシアの髪を撫でる。実際、見た目通りすべすべで、滑らかだ。
「そういえばさ」
「? そういえば?」
アリシアと目が合う。咄嗟に目を逸らそうしたのを堪えて、引き続き左手で撫で撫で。
「ロワって会長と戦ったときは本気だったの?」
「……んにゃ。本気じゃなかったけど、最後の方では力を発揮するのを余儀なくされたって感じ」
「じゃあ中盤は?私にはロワが吐血したように見えてびっくりしちゃって…」
「中盤はあんましだったかな。最後に吐きかけたのは事実だけど」
「気をつけてよ?私たち、一応冒険者やってること伏せないといけないんだから」
「……あ、ああ」
冒険者であることを伏せる。俺は今日それを堂々と破ってしまった。クリシャは一応クラス委員長だから、人脈は広くなるはず。そうなれば、どこかで口が滑ることが否めない。
(信じてはいるけど、それでもなぁ)
不安ではある。クリシャが
「はい、チェンジねー」
そう言って、アリシアは起き上がるとベットの端に移動して俺に手招きをする。
「いや、俺はいいって」
自分がアリシアにするのは少し恥ずかしいくらいで済んだのだが、自分がやられる側になると、わけが違う。
おまけに、今は一日の疲れが押し寄せてきて考えがまとまらない。ここで甘やかされたら、なにか変なことを口走ってしまいそうだ。
「だーめ。私だけされっぱなしはやだ」
ん?アリシアの声がなんかふわふわしてないか?いつものツンデレキャラの話し方くらいの強いインパクトがない。
「それでもだ。つか、晩ご飯の準備しないと」
「むー」
「…っ!まてっ!」
気に障ったのか、頬を膨らませたアリシアが両手で俺の頭を掴み、強制的に太ももの上にのせた。
しかも、俺がやったのと同じように頭を撫でてくる。
「よしよーし」
「……だっから、おれは、べつに…」
頭が重い。
世界がだんだん朦朧になっていく。目が、自然と…
ロワはアリシアの膝枕の上で睡魔に耐えられず、眠りに落ちてしまった。
その膝枕をしている本人はというと…
「ロワ?聞こえる?もしかして寝ちゃった?」
「…っっ」
「ほんと、愛想が良ければもっとかっこいいのに…」
自分の膝枕ですやすやと今からなにか寝言を言ってしまいそうなほどに気持ちよさそうに眠る少年を再び優しく撫でる。そして、完全に眠りに落ちてから一言。
「あのころから、ずっと好きだよ」
アリシアは頬を赤く染めて、夕食の準備を始めたのだった。
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なんかなぁ。最近こうして移してると、なぜこのパートを生み出してしまったのかという衝動に駆られる…
そしてなぜかなろうでのPV数が急に伸びたんですよね。カクヨム効果?
奇数回じゃないので恒例の、はやりません。
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