第19話 後輩に冒険者やってることが見抜かれたんだが…
放課後。俺は今日の昼に会長がグラウンドに俺を呼び出して決闘をさせた理由を教えてもらうべく、ホームルームが終わるとすぐに生徒会室に向かった。
中では会長が一人で作業をしており、ちょうど今朝崩れたダンボールの中身チェックをしているところだ。
「さて、会長。なぜ俺をグラウンドで決闘なんてさせたんですか。答えてください」
「まず、座ってくれよ。そんなに重い雰囲気だと僕も話しずらい」
俺は生徒会室の端にあるソファーに座った。このあたりのダンボールだけなくなっていたため、あらかじめ片付けたのだろう。
「お茶とかはいるかい?」
「そんなに畏まった話なんですか?」
「じゃあ大丈夫だね」
そう言って、会長は一度立ち上がったが、もう一度ソファーに腰をかける。
というか、このソファーの座り心地がすごくいい。ソファーってこんなに柔らかいものだったか?
俺がソファーにもたれかかったり、手で押してみたりといろいろ物色していた中、会長が突然話し始めた。
「ロワくん、生徒会にー」
「いやです」
「早すぎない!?」
「今日副会長によろしくって言われたので」
すると、会長はやけに納得した顔でもう一度俺に問いかけてきた。
「ロワくん、考えてくれるだけでも構わない。生徒会に入ってはもらえないだろうか」
「人員集め、してないんですね」
「まあ、ね。この状態だとできるものもできないから」
この大量のダンボールのせいだろう。これを全て整理した方が人員集めより大切だと判断した、といったところだろうか。
「アリシアとクリシャはどうするんですか?」
「アリシアさんはまだ聞いてないからなんとも言えないけど、クリシャさんからは検討中だけどできれば入りたいらしい」
アリシアとクリシャも加入するとなると流れで俺も…となる可能性が高い。そうなると、関わってしまった以上加入するしかないか。
そんなことを考えているとちょうど、アリシアとクリシャがそれぞれ生徒会室に入ってくる。噂をすれば影とはまさにこのことだと身を持って感じた。同時に、会長はすぐさま二人に同じ問いを投げかける。
「いきなりで悪いんだけど、二人とも生徒会に入るつもりはあるのかい?」
「えっ…」「私は確か、副会長さんに言ったと思います」
アリシアがやや丸まった。生徒会に入ることなんて考えていなかったのだろう。クリシャはそのまま副会長に言ったと、事実を述べている。
「アリシアさんは?いきなりで申し訳ないんだけど…」
「私は…」
アリシアが呟いて、ソファーに座っている俺に視線を送る。俺と目が合って、アリシアは数回瞬きをすると、急に目が輝き始めた。
嫌な予感がする。今のアリシアの目は好奇心たっぷり、なにかおもしろいことを思いついたような目だ。
一瞬だけ輝いた目がすぐさまいつも通りになる。さては隠したな。
「私は、ロワが入るなら入ります」
「なっ!?」
「ふふっ」
今生徒会室にいるメンバー全員の視線が俺に注がれる。やられた。アリシアも内心、加入する側なのだろうが、さっきまで俺が会長に誘われて断ったのを察したのだろう。
この言葉により、俺も一気に持っていくつもりだ。これで俺がもう一度誘いを断るとアリシアも断るということになる。そしたら深刻な人員不足だ。
(くっそー!最近ゆるかったからなー!!)
内心、大発狂だった。最近、ずっとガードが緩かったのがここにきて大きなダメージを与えてきた。
今は会長に心を読む能力があることなんて忘れて、思うことを素直に叫ぶ。もちろん心の中で。
「ちょっと、考えさせてください。なんか複雑なことになってきたので」
「ああ。今週中に返事を頼むよ」
会長の方も、アリシアの強制的な後押しにより、安心したのだろう。
さっきと雰囲気が違う。
「おぉー、全員いるー?誰か魔力たくさんある人で物の取り出ししてほしいんだけど」
「私が行きます」
アリシアが副会長と共に最後のダンボールを運ぶべく、ダンボール置き場に向かった。
「僕たちも作業しようか」
「はい」「…」
俺たちはいつも通り、放課後の作業を始めた。
「先輩」
生徒会室にある最後のダンボールから下敷きなどの配布の文房具を取り出し、数を数え始めてすぐだった。
「ん?どうかした?」
「先輩ってなんか副業やってます?」
「なにもしてないけど。なんで?」
「今日、先輩が使ってた剣あるじゃないですか」
「あ、ああ」
背中に冷たい水滴が流れる。俺はなんとかポーカーフェイスを保って作業を続ける。自分にずっと激励の言葉を言い聞かせながら。
(ポーカーフェイス、ポーカーフェイスを維持するんだ!)
内心、ガクガク震えているが腹に力を入れてまでポーカーフェイスの維持に全力を注ぐ。おかげで下敷きの束を落としてしまい、拾うと同時に足まで小刻みに震え始めた。
「その剣が会長が使ってた学園から支給される剣より使い古してません?すこし刃先が削れてましたよ?」
「そ、そうか?別に普通だと思うけど…」
だんだんポーカーフェイスが崩れていくのが自分でも実感できた。しかもクリシャからの視線を全部逸らす。嘘をついているときの典型的な行動を俺は一瞬で網羅してしまった。
「別に私はいいと思いますよ。副業」
「ってことはクリシャはなにかしてるのか?」
話題を逸らすためにすぐ話を振ってしまった。不自然なくらい早かった。
「別に。なんか先輩が素直じゃないなぁと思いまして」
頬をぶくーっと膨らませて、作業をしながらちょくちょく俺に視線を送ってくる。なんなんだこのかわいい後輩は。
青く透き通ったクリシャの目がしっかり怒りを訴えかけている。
顔の表情では笑っているのに、目が全く笑ってない。
仕方なく、俺は辺りを見回す。誰もいないことを確認し、小声にクリシャに言ってはいけない俺の最大の隠し事を話した。
「俺、冒険者やってる」
「そうだったんですね」
思いの外、表情を変えないクリシャ。だけど、怒りは消えたことを目で確認した。
「驚かないのか?」
「だって明らかに剣先が削れてましたし、使い慣れた感ありましたもん。そもそも、学年が違うのにフェリ会長と渡り合う人とか、なにかやってるとしか思いませんよ」
「習い事っていう路線は?」
「高校生になってまだ習い事をしているとは思わないので」
剣先が削れている主張が激しかったし、そのせいで俺が冒険者だとバレたようなものだ。今度、剣を新調しなくては…
「先輩って強い方なんですか?冒険者の中で」
「別に、あまり強くないぞ」
俺は誤魔化した。ここでさらにトップ級の冒険者です、なんて言ったらこれからの学校生活が一変しそうで怖いし、いつあの会長が聞き耳を立てているかわからない。
「まあ、素直に話してくれたので今のは許します」
「? なんのことだ?」
「今、嘘つきましたよね。声が浮いてました」
「……」
沈黙。沈黙を貫く。許すって言ったし、沈黙だ。
「まあ、いいです。その分、先輩にはいつかなにかしてもらいますので」
「えぇ…」
ここは受け入れるしかない。これ以上、冒険者関係のことを話すわけにはいかない。
「楽しみにしといてくださいね!」
「お願いしますからあまりハードなのはやめてね」
「どうでしょうねー?」
クリシャは俺をからかうな口調と素振りで言った。お互い、再び作業を開始し、何事もなく、今日の作業も終わった。
「ふぅ〜、あと少しだね!」
副会長が先に戻って残りの仕事を確認していた。
「これなら明日に学校にきて作業を一気に終わらせてもよくないですか?休みですけど、俺は来れますよ」
「いいね!それ!私は来れるよ!」
「私も来れると思います。午前中なら」
「僕も無論来るよ」
「私も、多分大丈夫だと思います」
各々、俺に続いてみんな来れることを確認。
「じゃあみんな、明日の午前中に残りの作業を一気に終わらせよう!終わり次第、僕から生徒会特権を話そう」
生徒会特権…いろいろあったせいで頭からすっぽり抜けていた。
「完全に忘れてました」
「ロワくん、アリシアさん、クリシャさんの3人は入ったら特権を得られるから。入らないとないから早めに決めてねー」
副会長まで後押ししてくる。もはや、俺に逃げ場はないようなものだ。
ほぼ答えは1択だが、俺は頭を悩ませながらアリシアと一緒に寮の部屋へ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スマホから投稿してるのでもしかしたら「ー」の数がおかしいかも?です。
時間がなかったため改稿ほぼなし!です!
この後絶対に手を加えると思っていてください…
というわけでいつも通りの!
小説のフォロー、さらに★をつけてくれると作者のモチベーションが上がるかも!?
よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます