第14話 怪我しかけた後輩を助けたら…

目覚ましが朝早くに鳴り響く。俺はうるさい目覚ましを止め、目を手で擦りながら起き上がる。


「早くー!遅れちゃうよー」


今朝から、俺も生徒会の手伝いに入ることになったのだ。


なんとか眠気を抑えながら支度をし、昨日の授業の復習を軽くしてから、数日ぶりに再びアリシアと一緒に朝食を食べている。


「ロワもまさか生徒会側にくるなんてねー」


「俺もこんなことになると思ってなかったよ…」


確かに、1日限りだと思っていたため気が重い。だが、クリシャの頼みをすでに引き受けてしまったのだ。もう引き下れない。


朝食を食べてからはできる限り身支度を早く済ませる。


教科書とノートをかばんに詰めて、2年生になって初めて瞬間移動テレポートで登校した。


「教室に2人っきりってなんか変な感じ」


教室にかばんを置いて、俺たちは生徒会室までダッシュで駆け上がる。


「おはよう!ロワくんが今日も来てくれてうれしいよ」


「会長は元気ですね…」


さすがにこんなに急いで登校したことはなかったため、俺はすっかり息切れしていた。アリシアはここ数日で慣れたのか、少しだけだった。


「あ!先輩、おはようございます!」


「お、おはよう…」


奥から作業中のクリシャも出てきて、俺も本格的に作業に取りかかった。


「昨日の続きですね」


そう言って、クリシャが俺に用品の個数の書かれた表を俺に見せる。やはり量が多い。


「はぁ…まあ、頑張るしかないよな」


「まあ、その分なにかがもらえますよ」


「だな」


俺はペンが50本入った紙袋を開封し、取り出して数えようとした瞬間、


「きゃっ!」


クリシャの声が聞こえた。俺は慌てて振り返ると、4段に積まれたダンボールが既にグラグラ動いていて、今すぐにでも落ちてきそうなくらいだ。


「危ないっ!」


俺はすぐにクリシャの元へ向かった。

それと同時に、耐えきれなくなったダンボールが落ちてくる。このままでは2人とも無事では済まないため思わず速度上げを使ってしまった。


「ふぇ?」


速度上げのおかげでなんとかクリシャの救出に成功した。このままだったら下手するとダンボールに潰されていたかもしれない。


大きな衝撃が4階中に響くと同時に、ほかのメンバーが慌てて俺たちのところへ来た。


「大丈夫かい!?怪我はない?」


会長が俺たちに駆け寄り、2人ともに怪我がないか診ている。副会長はもう落ちてきたダンボールの整理を始めていた。行動力がすごい。俺には到底できないことだ。


「会長って、治癒魔法使えるんですか?」


「僕は基本的な魔法は全種類マスターしているつもりだ。もちろん治癒魔法も」


「そう、なんですね」


魔法が使えない俺に深く刺さる言葉だったかもしれない。


「怪我とかはないみたいだね。どこか具合が悪かったらすぐに言ってほしい。無理だけはしないでね」


「「はい」」


俺たちの作業は一時中断となり、朝の作業も落ちたダンボールのせいであまり進まなかった。


「こりゃあ、放課後にたくさんしないとまずいことになるね…」


「なんで、」


俺が言おうとしたとき、会長は先に口走っていた。


「来週中に半分終わらせておくとまず一つ特権をくれるらしいんだよねちなみに今はようやく4分の1くらい」


「そうなんですねー」


思わずあくびが出てしまい、少し変な声になってしまった。

クリシャが「眠いんですか?」と、微笑している。


「そりゃこんなに早起きすればな。いつもならもう少し遅めだし…」


「わざわざ早起きしてくれてありがとうございます」


「だなー。今は軽く後悔してるかも」


「え?そうなんですか?」


なぜかクリシャがしゅん、としている。別に、やると言ったのは俺なんだからクリシャが落ち込まなくてもいいだろうに。


「冗談だよ。とりあえずこの整理全部終わるまでは毎日来るから」


そう言って、俺は廊下でダンボールを積んでいる会長のヘルプへ行った。


「ところでロワくん、速度上げが使えるのかい?」


「はい」


さっきクリシャ救出のときに速めに移動したのが見えていたのだろうか。でも、速度上げはみんな使えるはずの魔法だ。


「速度上げをこんなにうまく使える人は初めてだよ!ロワくん!今日の昼休憩のとき、グラウンドに来てくれないかい?」


会長の目が輝いている。別に大した魔法でもないと思うのだが…

そもそも、なんでグラウンドなんだ?


「僕、速度上げとかあってもなくてもいい魔法がうまく扱えないものでね…ロワくんが羨ましいよ」


「そういう会長だって、基本的な魔法は全て使えるのでしょう?そっちのが羨ましいですよ」


落ちたダンボールを戻しながら、俺は自分を卑下するように言った。実際、本当に使えないけど。


「とりあえず、今日の昼にグラウンドね!よろしくー!」


すでに決定事項らしいので従うしかない。


「あの、結界が貼られた方ですか?」


「ああ!そっちでいいよ!」


会長がうれしそうにはしゃぎながらダッシュで階段を駆け降りていった。グラウンドの使用許可を取りに職員室に行ったと思う。


「よろしくな」


そう言って、駆け下りる会長を見送っていた俺の隣にいつのまにか副会長がいた。


「いや、まだ役員になってませんよ。なるつもりもないですし」


「君はもう確定だよ。フェリがあんなにハイテンションを超えたテンションなのは久しぶりに見た。あいつは君をこのまま手放すはずはないと思う」


「はー」


俺はそのまま立ち尽くしていた。頭も真っ白でなにも考えていない。完全に空っぽ状態だ。

さらに副会長が俺の肩を叩いて、「まあ、がんばれ」と励ましてくれた。


頑張りようがないとも思うが。

あと、なぜグラウンドなのか聞き忘れてしまった…

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