第11話 急に現れた人たちに一方的に事故処理をされたのだが…
「ねえねえロワ!どういうこと!?こんなの聞いてない!」
アリシアが俺のところまで降りてくると、俺はさらに冷静に思考する。
つまり、アリシアのさっきの雷撃が魔力消費量が大きすぎてそれに森に漂っていた魔力が反応した?
いや、でもムーンベアを今の状態にしている元凶は空からだと見て間違いない。ムーンベアがいる上空付近の雲が黒くなっている。
「ねえ!ロワ!」
「お、おう」
「どうするの?続けて討伐することもできなくはないけど、私たちが勝手にしたらまずいよね」
確かにこれは一種の未確認生命体でもある。勝手に倒すとこの後がめんどくさそうだ。だけど、重要なのは森の資源だ。
ムーンベアが復活したせいで森全体が徐々に荒れ始めている。いつの間にか、周囲に渦巻き状の風が吹き始めていた。
「アリシア、ここで待ってろ。俺が終わらせる」
「でも…」
「すぐに戻る。安心しろ。それか俺の援護もしてくれていいんだよ?」
「ごめん、魔力がもう残ってないの」
「だから待ってろって言ったんだよ」
アリシアが頷くと、俺はそのまま木の枝の上に着地。改めて近くで見るとすごい迫力だ。
普通、ムーンベアは4人以上での討伐が適当とされている。だけど、今は俺一人ということもあって、余計にプレッシャーがあった。
「やりますか」
呟いて、剣を抜き、少ないながらも魔力を込める。
速度上げを用意し、足にも軽く力を入れると、すぐに急加速。
「
速度上げで目にも留まらぬ速度で斬撃を入れており、全く音がしないため、こう呼ぶことにした。ちなみに、この斬撃は回避不可能で、俺が数秒間に入れた斬撃がさらに周囲の魔力を吸って増幅する仕組みだ。
この技は単に考えると1対1の時には向いていない。だが…
「やはりな」
ムーンベアの魔力が一気に減っている。あえて空気にも斬撃を入れたことにより、魔力供給の波を切ったのだ。今仕留め損なうと俺たちではもう倒せないことになる。
最後の力を振り絞り、ムーンベアに再び斬撃を入れようとしたその時ーー
「そこまでだ」
空から変な服?戦闘服なのかよくわからないものを着ている人たちが降りてくる。気づかないうちに、俺の頭上真上に大きな飛行船があった。
「君は下がっているんだ」
さらに上から降りてきた人に安全な場所まで運んでもらえた。
「君、冒険者かい?」
その人は何一つ表情を変えず、俺に話しかけてくる。反応しづらかったが、とりあえず頷いて答えた。
「なら、立体映像フォンがあるだろう。それで今からの戦闘を撮影してくれ。今飛んでいる彼女にもお願いしたい」
「わかりました」
そう言って、彼はムーンベアの方に戻る。
「ロワ、大丈夫?怪我とかは……なさそうだね!よかったー」
アリシアが俺の元まで降りてきた。ちょうど俺もさっきの人の頼みをアリシアに話した。
「じゃあ私は上から撮るね。別角度のものもあった方がいいだろうし」
そう言って、アリシアはまた上へ飛んでいった。
俺は撮影ボタンを押すと、そのまま座った状態でフォンを構える。
撮影を始めると、何人もの大人たちがムーンベアに攻撃を開始する。合計で6人いて2組に分かれているのが確認できた。
しかも見事な連携であっという間にムーンベアを瀕死状態に追い込んでいる。
俺の手柄もあったのだろうが、撮影を始めて4分くらいでムーンベアが魔力になって消滅した。
終わると、さっき俺を助けてくれた人がまた俺のところまでやってきた。
「君、怪我は大丈夫かい。立てる?」
差し伸べられた手を取り、俺はゆっくり立ち上がった。アリシアも他の人に話しかけられていた。
「街近くまで送ろう。その間になにがあったか聞かせてくれないだろうか」
すごく真剣な表情で俺を見てくる。さすがにこれからどこか他の場所に連れて行かれたり、事情聴取することもないだろうと思い、俺はアリシアと一緒に飛行船に乗った。
飛行船には幾つもの部屋があり、すごく、斬新なデザインになっている。俺たちは一番奥の部屋に案内された。
ソファーが置いてあり、まさに接客などで使われそうな部屋だ。
「2人とも。立体映像フォンを、借りてもいいだろうか。さっきの動画を抽出したい」
俺たちは立体映像フォンを差し出すと、今度は戦闘服を着ていない、女の人が俺たちの向かい側に座った。
「すぐに終わるから安心してね。聞きたいことは2つ。1つ目。あのムーンベアはいつ凶暴化したの?」
さっきの人たちとは違い、柔らかい、優しい声で自然と安心感が湧く。アリシアが目線を送ってきたため、ここは俺が答える。
「俺たちがちょうどムーンベアを倒した後です。終わった瞬間にムーンベアに大量の魔力が吸われました」
「次。あなたたち、何者なの?並の冒険者じゃあのモンスターに傷をつけることなんてできない。しかも、あなたたちまだ学生でしょ?なおさら気になるわ」
一瞬、体がゾクっと震えたが、後に述べられた理由で俺もアリシアも納得した。
「それは聞く必要ないぜー」
俺たちの立体映像フォンを持って、もう一人、さっきの戦場にもいない人がやってきた。
「あら、どうして?」
「このデザインを見ろよ。一目瞭然だ。並の冒険者がこんな特別デザインのフォンを持ってると思うか?」
その男がフォンを女の人に渡すと、デザインを見た後に俺たちに返した。
「あなたたち、すごいのね。ごめんなさいね。見た目だけで判断しちゃって」
そう言って、女の人も「もうすぐ着くと思うから」と言って俺たちのいる部屋を後にした。
「それじゃ。また会うことがあれば」
俺たちは会釈だけして、飛行船から降りる前にこっそり、寮の俺の部屋に
「状況整理をしよう。何が起きたか頭が追いついてない」
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読んでいただき誠にありがとうございます。
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