第10話 初めて2人でモンスター討伐したのに事故ったのだが…
「さてと…」
カバンを床に置き、クローゼットの奥の自分で作った隠し部屋に置いてある冒険者用具一式を取り出す。
「こんなところあったんだ!」
「ウォイ!」
アリシアが後ろにいたことを忘れてしまって、思わず奇声を上げてしまった。
俺の隠し部屋が気になるのか、すごく前のめりになっていた。
「さほど時間使うつもりもないから。アリシアも早く準備して行くぞ」
「はーい」
俺はさらに奥に入っている立体映像フォンや、剣を入念にゆっくりと取り出す。
もう一度後ろを振り向くと、アリシアが準備を済ませていた。
「そんな魔法もあるのかよ」
冒険者の服や装備に着替えるにはそこそこ時間がかかる。それをアリシアは俺が剣を出す多くて1分くらいの時間で終わらせていた。
魔法で着替えたとしか思えない。
「頑張ったんだよ?自分で一から魔法陣作ってさー」
「その話はまた今度な」
スルーすると、俺も早く冒険者用の動きやすい服に着替えた。
「
「なんで知ってたの?」
「それくらいできないと自分が最強だって名乗らないだろ普通。あまり物理的な方で強いように見えないし」
「まあね。でも私たちは二人で最強だから!」
「そうだな」
俺たちはアリシアの
⁂ ⁂ ⁂
「いつも通りだな」
「だねー」
冒険者ギルドに着いて、中に入って依頼が貼ってある看板を見るも、特に変わったこともなく、普通にモンスター討伐くらいしかない。
だが、俺はその隣の注意書きに目を留めた。
『モンスターが討伐した後も確認をお願いします』
と書いてある。討伐しきれてなくて瀕死状態のモンスターが生き延びたなんてことがあったのだろうか。
考えているうちに、アリシアが適当に依頼をいくつか申請してきた。
内容は凶暴化しているムーンベアの討伐と、その近辺のモンスター調査らしい。
「ロワ、大丈夫?考え込んでる様子だけど…」
「ああ、大丈夫。ちょっとあそこの注意書きがなぜ貼ってあるのかなぁと思っただけだ」
そう言うと、アリシアも注意書きに目を通した。
「ただの不注意じゃない?」
「やっぱそうだよな」
依頼申請を終えて、俺たちはムーンベアの討伐に向かったのだが、その森がまずひどい状態だった。
「うわ…なんかギルド側の気持ちを理解した気がする」
確かにその通りかもしれない。周辺の森の管理はギルド側がしてくれているのだが、毎回こんなひどい状態だとやる気も失せるだろう。
荒らされた木々。ゴミ袋何袋分にもなるかわからないほどの落ち葉。それにちょくちょく見かけるモンスターたち。
「これもみんな凶暴化してるムーンベアのせいなのかな」
「今はそうとしか考えられないな。俺たちが気にするようなことじゃない」
アリシアは楽々と魔法で空を飛べるのだが、俺は少ない魔力を絞ってなんとか飛べていた。そのせいか、俺とアリシアの飛ぶ高さが違っていた。
「ロワは木と木の間をジャンプで飛んで移動した方がいいと思うのは私だけ?」
「俺もそうしたいけど、あの惨状じゃできるものもできない」
俺をしっかりスルーして、アリシアが声を上げた。
「あ!いた!」
アリシアが指差した方向を見る。すると、今も森を荒らし続けているムーンベアがいた。
「よーし、さっさと終わらせてきますかー!」
意気揚々とムーンベアに近づく俺をアリシアが止めた。
「いいよ。私がここで終わらせるから」
そう言って、アリシアが右手に小さな魔法陣を発現させると同時にムーンベアが炎に包まれ、そのあとすぐに雷撃。
雷の音が街にまで響き渡るほど大きなものだった。
「なあ、今度俺に魔法を教えてくれない?」
「それはやだ」
ムーンベアが跡形もなく消滅し、おまけに周辺の木々が燃えてしまったためアリシアがさらに魔法で水をかける。
空中に浮く一つの大きな魔法陣。通常、魔法陣一つで1種しか魔法を発動できないため、3種の魔法が繰り出せるアリシアのすごさを改めて感じた。
ーーーーーーッッッッ!!
モンスター調査はムーンベアを探すときに空中で済ませたため、そのまま帰ろうとしていた俺たちに、大きな衝撃派が直撃した。
「なに!?私なにもしてないよ!?」
アリシアが慌てて振り向くと、さっき討伐したはずのムーンベアからこれまでに感じたことのない量の魔力が漂っていた。
「まさか、な」
俺はあの貼ってあった注意書きの意味を今、ようやく理解した。
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