第2話 怪しい手紙が届いたのだが…
俺が強くなろうとした理由は弱いと言われていたのが嫌だった以外にもある。
むしろ、こっちの方が理由として占めている割合が大きいのかもしれない。
ーーーーーー俺は、殴られるのが嫌だった
もっと正確に言うと、ダメージをもらうのが嫌だった。さらにさらにわかりやすいように言うと、つまり俺はけがをするのが嫌だったのだ!
けがって、1回すると治すのに1週間くらいかかってしまう。しかも重いやつだと数ヶ月とか。あと普通に痛いし。
だから、そんなこともあり、俺は強くなった。
にしても……おまえらどんだけ俺を仲間に入れたいんだよ!?ここのところ気配を消さずに堂々と冒険者ギルドに入ると絶対に囲まれるんだが!?
さすがにあしらうのも精神的に限界に達しそうなので気配を消す作戦。
受付の人のところまで気配を消して行けば、なんの問題もない。
そして、今日もいつも通り運動代わりに軽いモンスター討伐の依頼を受ける。
モンスター討伐の依頼はいつ来てもなくならないし、報酬も固定化されているため非常に便利だ。ちなみに今日はスッキリしたいため、ウルフの依頼を受けた。
昔は倒すことですら困難だったゴブリンやオークたちも秒で倒せる。それもこれも全て俺が2年間の努力で編み出した黄金パターンのおかげなのだが。
俺の黄金パターン。これは本当に限られた人物にしかできない。
まず、魔法に関して適正がない人。これがまずあまりいない。みんな魔法は個人差はあるが等しく使える。その中で使えないとなると、残された道はそう。剣だ。
これが次の条件。剣技のマスターだ。これは誰にでもできる。努力さえすれば。まあでも多くは長続きしないで三日坊主がオチだけど。
最後に、これが一番希少な部分だ。魔法を一つや二つのみに極振りすること。
俺の場合は二つ。『解析鑑定』と『速度上げ・縮地』だ。これと剣技のマスターの3点セットで秒で相手を倒すことができる。
順番としてはまず、『速度上げ』で『解析鑑定』の速度を上げ、一瞬で鑑定を終わらせ、相手の急所を見つける。
そしたら次は『速度上げ』と『縮地』を組み合わせて目にも留まらぬスピードで相手に接近し、急所を叩く。
それだけ。
なのだがこれをマスターするのに時間がかかったものだ。
ま魔法の二つのみに極振り。これをするのには大きな覚悟が必要だ。ミスをすれば人生が終わると言っても過言ではない。
しかも剣技もマスターしなければ実際にモンスターを倒せない。
だから『良い子のみんなは絶対に真似しないでね〜』という事前アナウンスをかけなければいけないような試合内容が何事もなかったかのように放送されたわけだが、実のところ、俺は結構このことを気にかけている。
おっと、そんなことを話している間にウルフを全滅させてしまった。
とりあえず、討伐した証拠として皮を持ち帰らないといけないため、皮を剥ぐ。
まあそんな感じで一日を過ごしている……というわけでもない。俺はこれでも一応まだ学校に通っている身だ。
しかし、留年とかではなく、さらに極めたい人へのいわば研究者ルートというやつなのだが。無論、学費は自分で稼げているため問題ない。
そんな日々を送り、俺宛に一通の手紙が届いた。差出人は書かれていない。
『明後日、あの場所で会いましょう』
と。それだけだった。まず差出人が書かれていないため俺が無理に行く必要もない。だけど、“あの場所”というのが引っかかる。
あの場所?俺、誰かになにか悪いことでもしたのか?
思い返してみるも、なにも思い当たる節がない。だとしたら、あいつ…
俺の親友だったら…もしそうだったら当然優勝したばかりの俺の名前も知っているだろう。
しかも日時は明後日。仮にこのドルド王国から一番遠い場所にいたとしても魔法を駆使すればこの町までたどりつけるはずだ。
覚えていてくれたんだな…
でも、もし違ったら?
そんな考えが頭をよぎる。仮に間違っていて、襲われでもしたら大変だ。かといって、親友との再会に武器を持っていくのもあまりいい気味ではない。
「どうしたもんかな…」
ため息混じりで呟いた。
そして、改めて手紙を見てみる。
白い封筒に端が少しだけピンクの紙。真ん中に書いてある綺麗な文字。途端、俺の体に電撃のような衝撃が走る。
「これ、差出人女じゃね?」
どう考えても男が書くような手紙じゃない。しかもあいつは不器用だったからこんなに綺麗に封筒を折ることができるだろうか。
否、できない。つまりこれは何者かが俺を誘き出すためのものだ。しかも、仮にあいつだったとして約束の日はまだ早い。俺はそう決定した。その後、俺はすぐにその騙し手紙を捨てた。
あっという間に時は過ぎ、来る明後日。俺は とりあえずあいつと最後に遊んだ森に向かった。
あのときと変わらず、あまり光がささない全体的に暗い森。俺はいくつか、昔作った秘密基地などを見て回った。だけど、そこに人の姿はなかった。
最後にこの森で一番大きな木がある場所に向かう。
「ーーーー久しぶり」
そこには全身を黒いローブで覆った、誰かが立っていた。
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