第7話 体育祭①
沙耶の頭を撫でてから沙耶の様子がおかしい。
頭を撫でた次の日は朝待ち伏せていなかった。
昼は一緒にしたが、夏目とずっと話していた。
その次の日も同じだった。
そんな日が続いて体育祭の日になった。
「め、起きていいよ。」
最近曜の起こし方が変わった。
俺が起きる前にまたなにかしているのか。
曜の方を見る。
「…。」
「ん、どうしたの?」
ぽん
頭を撫でた。
「な、なにをしてんの。」
曜の顔が真っ赤になった。
「ごめん、沙耶の頭撫でたら沙耶の様子がおかしくなったからなんでかなって。」
そう言った途端曜の機嫌が悪くなった。
「なに、私とやっちゃん比べたの?」
曜が怒った。
その間も頭を撫でるのはやめない。
「確かに沙耶の頭撫でた時思っちゃったんだよな、曜の方が撫でていいなって。」
沙耶が悪いとかではなく、曜の方が罪悪感がない。
「ふん、どうせ後付けでしょ。」
撫でられ続けながらそっぽを向く。
「ほんとに思ってるって。」
(やばい、中毒性がある、手が離れない。)
そう思いながら頭を撫で続けていると。
「もう駄目、ご飯行こ。」
曜が耐えきれなくなった様子で手を外す。
「わかった。」
正直助かった、俺は止められそうになかった。
「後、やっちゃんが変なのは今に始まったことじゃないから気にしなくていいよ。」
曜が最後にそう言って部屋を出ていった。
「まぁそれもそうか。」
そう呟いて下へ向かう。
今回はあまり曜の機嫌が悪くない。
「なぁ、なんで沙耶には俺の連絡先あげちゃ駄目なんだ?」
ずっと曜に言われた通りにしていたがなんとなく聞いてみる。
「ん、ああやっちゃんにあげたら毎日連絡くるよ。」
「なるほど、それはめんどくさい。」
沙耶ならほんとに毎日何回も連絡してきそうだ。
「でも今日体育祭で百メートル負けたら連絡先交換しなきゃいけないけどな。」
「じゃあ大丈夫じゃん。」
「まぁ本気は出すけど。」
正直やってみないとわからないが頑張ってみる。
「じゃあ負けたらもうご飯作ってあげない。」
なんかすごい負けられなくなった。
「絶対勝つ。」
「じゃあ勝ったら晩御飯作るね。」
そう言うが最近はほとんど毎日曜がご飯を作ってくれてる。
「ありがとな。」
曜が嬉しそうに片付けを始めた。
曜が家を出て俺も家を出た。
今日も沙耶はいない。
(まぁ別に一年の時に戻っただけだが。)
そう思いながら学校に向かった。
いつもより少し早く学校に来たので暇になった。
教室は騒がしかったので少しぶらつく。
前に沙耶と話をした屋上前に着いた。
そこに沙耶が居た。
「あ、要。」
ぱっと見はいつも通りだ。
「ああ。」
沙耶と話すとは思ってなかったので簡素になる。
「本番だね。」
「そうだな。」
この雰囲気が好きだ。
一言で話が済む落ち着いたこの雰囲気が。
「今日の勝負覚えてる?」
沙耶がこっちを向いて聞いてくる。
「ああ、百メートルは一位で、リレーは進藤に勝てばいいんだろ、それとは別に曜とも約束したから絶対に負けられなくなったが。」
曜のご飯がかかってるから絶対に負けられない。
「そっか。」
沙耶の雰囲気がおとなしい。
「ねぇ、今日の体育祭で私達の組が勝ったら私の話聞いてくれる?」
沙耶が物憂げ感じで言ってきた。
「別にいいが。」
俺が勝った場合は別にいいだろ。
「そろそろ時間だな。」
もう戻らないと遅れてしまう。
「うん、お互い頑張ろうね。」
沙耶はそう言って教室に戻った。
「別に話ならなんでも聞くんだが。」
そう言って階段を降り廊下へ向かった。
「お前は知ってんの?」
隠れていた夏目に声をかける。
「何故ばれた。」
「沙耶がいるなら夏目もいるかなって。」
夏目は過保護だから沙耶を放っておけないんだろう。
「まぁ教えないよ、私に聞くのはルール違反だし。」
ウィンクをしながら言ってきた。
(可愛いなこいつ。)
「わかった、じゃあ行くか、ほんとにやばい。」
もう走らないと間に合わない。
遅れても別にこっそり混ざれば大丈夫みたいだが。
「あー、先行っていいよ、私走っても間に合わないから。」
夏目は運動神経皆無だそうだ。
クラスでは一番足が遅いと言っていた。
「じゃあゆっくり行くか。」
別に夏目を置いてまで走って行く気はない。
「まったく優しいな。」
「うるさい。」
どうも優しいと言われると悪態をついてしまう。
「行くぞ。」
「うん。」
そう言って二人で歩いて校庭へ向かった。
黒崎さんと清水君がずっと話していない。
清水君が黒崎さんの頭を撫でてから黒崎さんは今まで以上に意識して清水君の顔が見れなてない。
清水君はいつも通りだけど。
ただ焦れったい。
だから。
「黒崎さん、清水君に告白すれば?」
体育祭の当日に黒崎さんに言った。
前日にしたら休むかもしれないから。
「出来ないよ、まだ私は要に釣り合わない。」
今は屋上の扉の前にいる。
「でも、ずっとこのままは嫌でしょ?」
確かに今告白しても清水君は断るだろうけど。
「嫌、要と話したい。」
(それを清水君に伝えればいいのに。)
「じゃあ、こういうのはどう?今日の体育祭で私達の組が勝ったら清水君と話す。」
「負けたら?」
弱々しく聞いてくる。
「じゃあ、私の言うことなんでも聞くってどう?」
「なんで未来なの。」
少し笑顔が出た。
「私、黒崎さんのこと大好きだから一回命令してみたかったんだよね。」
半分本気で半分冗談で伝える。
「まぁいいよそれで、私も覚悟決めないと。」
黒崎さんの目に生気が戻った。
「じゃあ私は先行くね。」
ひとまずは一人にしておく。
「うん、少ししたら私も行くね。」
黒崎さんと別れて階段を降りると清水君が階段を上って行った。
(私気づかれなかった?)
少しガッカリしたが、上には黒崎さんがいる。
先回りすることは出来ないからこっそり後をつける。
清水君と黒崎さんが会ってしまった。
距離的に話してる内容は聞こえないが普通に話せている。
(よかった、私が余計なことするまでもなかったかな。)
そう思っていると黒崎さんが下に降りて行った。
清水君が行ったら私も行こうと思っていたら。
清水君にバレていた。
正直清水君に言われた内容はわからなかったが適当に合わせた。
時間的にもう間に合わない。
私を置いていってと言ったら清水君が一緒に遅刻してくれた。
(ほんと優しいな。)
口に出すと否定されるから心の中だけにしておく。
「ところでどういう言い訳するの?」
清水君にどうやって体育祭に加わるか聞く。
「普通に腹痛でいいだろ、俺は、お前は嫌なら忘れ物とかで。」
私が女子だから腹痛だと困るのがわかって他のも提案してくれる。
そういう些細なことが嬉しい。
「好きになっちゃうじゃん。」
小声で声が漏れた。
「なんか言ったか。」
「なにも、忘れ物なににしようかなって。」
私は黒崎さんの恋を応援している。
(だから私は清水君を好きになっちゃ駄目だ。)
自分の気持ちに蓋をして二人で進む。
「未来、遅かったね。」
クラスの応援席に着いたら黒崎さんが声をかけてきた。
「うん、ちょっと忘れ物しちゃって。」
清水君に言われたように伝える。
「そっか、てっきり要と密会でもしてるのかと。」
(鋭いな。)
「そんなことないよ。」
顔に出さないように気おつけながら答える。
周りが騒がしいため黒崎さんはやまとなでしこモードを切っている。
「それより、清水君の順番ってすぐだよね。」
「うん。」
一年生の百メートルが終わったらその次が清水君の番だ。
「もうすぐ一年生が終わるね。」
黒崎さんは前のように元気になっている。
「そうだね。」
それから少し会話をして清水君の番を待った。
そして清水君の番になった。
「要の番だ。」
清水君が準備に入った。
順番は内側から一、二、三、四組になっている。
「遠くて見えないけど二組の人なんか顔色悪くない?」
黒崎さんが変なことを聞いてきた。
「よく見えるね、私全然見えない。」
「私コンタクトでドーピングしてるから。」
確かに私は裸眼だが。
「なんか嫌な予感するんだけど。」
黒崎さんが目を細める。
今気づいたが周りの一部の女子がざわついている。
(流石にね。)
変なことを考えたが流石にそこまではしないだろう、と思う。
そして清水君達の百メートルが始まる。
「位置について、よーいドン。」
清水君達が走り出した、その一歩目で私達二組の人が清水君に倒れかかった。
「!」
とても驚いた。
そこまではしないと思ったけど。
(そこまでするのか。)
なんて思っていると。
「やばい。」
黒崎さんがとても驚いている。
(確かにあれはやばい。)
「ぶつかった人殺される。」
「そっち。」
黒崎さんが走りだそうとする。
「あ、未来犯人探しといて。」
それだけ言って走って行った。
「えー。」
(あの焦りようそんなに清水君ってやばいの。)
そんなことを考えたが今は犯人探しが最優先だ。
(まぁもうわかってるからいいけど。)
そして犯人らしき人のところへ向かった。
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