第3話 妹
学校が終わり要を探す、一組の教室には居なかった。
昇降口に行き靴を履き替え、外に出る。
校門を出たところで要がいた。
「待っててくれたの?」
「ああ、今日はバイトだから後十分したら帰ろうと思ってたが。」
要は生活費は貰っているが、自分の趣味のためのお金は自分で稼いでいる。
「じゃあ一緒に帰ろうか。」
まだ、学校が終わってすぐなので、人が少ない。
「ああ俺も時間ないから帰りながら話す。」
(私になにか話があるんだ、なんだろ付き合ってくれるのかな。)
なんてふわふわした気持ちで要について行く。
半分くらい進んだぐらいのところで要が口を開く。
「お前どういうつもりだ。」
要が少し低い声を出す。
「どういうって、なにが?」
本当にわからない、要の癪に障ることしたのか。
「なんで俺がお前のこと好きなんだよ。」
「あ…、いや、それは。」
確かにあれは調子に乗った。
「そのせいでくだらない勝負する羽目になったんだけど。」
「勝負?」
「お前にふさわしいのはどっちかっていうくだらない勝負、内容は次のテストで順位が高い方が勝ち、お前のところには話行ってないのか。」
私のために要が勝負をしてくれる、それが嬉しい。
「うん、私は聞いてない。」
意図的に私には言ってないのかもしれない。
「多分陰で私の役に立ちたいんだと思う。」
(ほんと鬱陶しい。)
「で、お前は俺に嘘をついた訳だが、俺はまだ続けなくちゃいけないのか?」
要は多分相当に怒っている。
昔から嘘をつかれるのが嫌いだったのを忘れていた。
「ごめんなさい、お願いです、もう一度だけチャンスをください。」
足を止めて要に頭を下げる。
要は優しいからいつもの要なら一度謝ると許してくれる。
でも今は相当怒っている、なにか見返りがないと。
「まぁいい、今回は許す。」
「え、いいの?」
内心大喜びする。
「ああどっちにしろ、俺が負ければ彼氏役が終わるしそれに、あの男潰したい。」
要の目がマジになる。
「ああいうの嫌いだもんね。」
(だからあれにしたんだけど。)
「でも実際勝てるの?」
要はやろうとすれば大概なんでもできる。
テストもいつもテスト勉強をしないでバイトをしているからいつもノー勉だ。
「しらん、ただ一つだけ確認させろ。」
要が真面目な顔で迫ってくる。
(かっこいいかっこいいかっこいい。)
急に顔を近づけられて顔が真っ赤になる。
「あいつ、お前にとって迷惑か?」
(あ、ほんと要のそういうところが好き。)
「うん、迷惑。」
「わかった。」
要は昔から私の迷惑になる人を陰で対処してくれた。
私が一番いじめられてた時も私に気づかれないように対処いてくれた。
(それに気づけてれば。)
「じゃあ俺はバイトに行く。」
気づいたらもう家に着いていた。
「うん頑張って。」
「ああ。」
そう言って、要は家に入って行った。
「は〜、好き。」
屈んで一言言って、家に入る。
「ただいま。」
沙耶と別れて家に入り、誰もいないだろうと挨拶をする。
「おか。」
曜が居たようだ。
「ああ、今日バイトだけど晩御飯どうする?」
バイトがある時は帰りが遅くなるから、晩御飯はバイト終わりに俺が作るか、曜が勝手に作って食べる。
「うーん、作ってあげようか?」
(ん、聞き間違いか?作ってくれる?)
「いいのか?」
曜が作ってくれるなんて今までにない。
だからといって作るのが下手とかではない。多分。
「うん、今日はなんとなく作ってあげる気になった。」
まさか、こんな日がくるとは、曜の手料理嬉しいもんだな。
「ありがとう。」
「ん。」
そう言って自室に帰っていく。
曜は可愛い、おそらく曜の手料理なんて、曜の同学年の奴らからしたら喉から手が出るほどだろう。
曜は自分のことを話さないが昔モテすぎたせいで、男が嫌いになり、長かった髪を切り、性格も優しかったがクールになった。
でもそれでまた、逆に人気が出ただろう。
ちなみに曜にちょっかい出してた、男は少しお話をして黙らせた。
正直曜は妹じゃなければ好きになる気がする。
「さて、行くか。」
バイトの準備をしてバイトに向かった。
要と別れて家に入った後、自室に向かった。
ベッドにダイブし写真を見る。
「要ー。」
足をばたつかせて叫ぶ。
「やっちゃんいる?」
部屋の外から声が聞こえる。
「ん、曜ちゃん?」
要の家の方の窓を開ける。
「やっちゃん久しぶり。」
「曜ちゃん、久しぶり、一年ぶり?」
曜ちゃんとも要と一緒で会ってなかった。
「結構変わったね、眼鏡も外したんだ。」
「うん曜ちゃんに言われた通りに要が好きだって言う黒髪ロングの清楚系に変えて、一年焦らしたよ。」
そう、私は昔は眼鏡をかけて野暮ったく、いじめを受けていた。
それを要がいつも助けてくれた。
そのせいで今度は要がいじめられるようになった。
要はいじめられても自分のことだと全て無視していた。
だから私のせいだと気づかなかった、それに気づいたのが中学の三年の時。
それから私は要の隣に立てるように自分を変えた。
曜ちゃんに聞いて、要の好きな見た目にした。
その際に曜ちゃんに要に好きになって欲しいなら一年間会わないようにと言われた、その方が要も意識するからって。
後要への罪滅ぼしも含めて。
「あーそれね、ごめん、めが黒髪ロングの清楚系が好きって嘘。」
(え?)
「嘘?」
「うん、ほんとは私みたいな、クーデレ系、でも別に嫌いな訳じゃないよ、清楚系も好きではあるから。」
頭がぐるぐるする。
「え、なんで?どうして?」
「私もさ、めのこと好きなんだ。」
すごいカミングアウトを聞いた気がする。
「え、でも兄妹だよね。」
「別に子供を作りたいとかじゃないよ、ずっと一緒に居たいだけ。」
「じゃあ私と要が付き合っても、曜ちゃんが一緒に居ても同じじゃないの?」
まだ頭がちゃんと回ってないがなんとか言葉をひねり出す。
「それでもいいけど、やっちゃんは駄目、要を傷つけすぎた。」
確かに要の優しさに漬け込んだのはある。
知らなかったとはいえ私は要を傷つけた。
「一年会わなければ少しはマシになると思ったけど変わらないね。」
「なんのこと?」
「やっちゃん今モテてるでしょ、それ使って要を落とそうとしてるでしょ。」
私の考えてることがまんまバレている。
「また、要を苦しめる気でしょ。」
「それは。」
まったくもってその通りだ私は自分のことだけ考えて要のことを考えてなかった。
「そうだよね、でも、私も諦めない曜ちゃんに認めてもらう。」
私の恋路を誰かに決められるのは嫌だが曜ちゃんにならいい、というより曜ちゃんには許してもらいたい。
「そ、じゃあ見させてもらうよ、要がまた前みたいになったら私は許さない。」
要と一緒だ曜ちゃんも人のために本気で怒れる。
「わかってる、見てて。」
「じゃ。」
そう言って、曜ちゃんは窓を閉めた。
「よし、曜ちゃんに認められるように頑張るのが最初の関門だ。」
新たに決意を固めた。
「声がでかいよ。」
窓越しに沙耶の声が聞こえる。
「はー、なんか散々文句言ったけど私も人のこと言えないよね。」
私も要に迷惑をかけている。
要は私にちょっかいかけてきたやつらを駆除してくれた。
私が弱かったせいで要に迷惑をかけた。
「めはなんとも思ってないんだろうけど。」
要は昔から自分の気に入ったものに理不尽を働くやつを絶対に許さない。
そんな要を好きになった。
だから私は要と一緒に居たいからこの家に残った。
でも、要のことを意識しすぎてツンケンした態度になってしまった。
要は知らないだろうけど、私が髪を切ったり性格変えたのは要の好みに合わせた結果だ。
前に要の好きなアニメのキャラを知ってそれに合わせた。
やっちゃんにはそのアニメに出てくる他のキャラの見た目を教えた。
「随分頑張ってたなやっちゃん。」
(それより、今日はめにご飯作らないと。)
今日の朝やっちゃんと付き合うフリをすると聞いて捨てられたくないから今日は要にご飯を作ると決めた。
「なに作ろうかな。」
とりあえず冷蔵庫に何があるか見に行こうと部屋を出た。
階段に向かう廊下、隣の部屋が要の部屋だ。
気がついたら入っていた。
「なにしてんの、私。」
いつも要がバイトの時、気がついたら要の部屋にいることがある。
「あ、やばいかも。」
ベッドに近づく。
「お兄ちゃんのベッド。」
昔は私もお兄ちゃんと呼んでいた、その頃から沙耶のことはやっちゃんと呼んでいたから、性格変えるついでに要のことをめと呼ぶようになった。
「お兄ちゃん。」
ベッドに倒れ込む。
お兄ちゃんの匂いがする。
「変態みたい。」
いつもは入ったことに気がつくとすぐ出るか、たまにこうしてベッドにダイブすることがある。
前に一回そのまま寝てしまったことがある、要は下に居て気づかなかったみたいだが。
「気をつけな…」
眠りに落ちた。
「ただいま。」
(あ、曜が下に居るのか。)
俺は誰も居ない家に挨拶をする。
理由は特にない。
(ん、居ないか?)
手洗いうがいを済ませ、リビングに向かう。
「居ない、寝たか?」
そして二階へ向かう。
曜の部屋にノックする。
返事がない。
「開けるぞ。」
別に勝手に開けても曜は怒りはしないが一応。
曜が居ない。
(まさかな。)
自分の部屋を開ける。
「すー。」
曜が俺のベッドで寝息を立てている。
前にも一回あったがその時は見て見ぬふりをした。
「可愛いな。」
寝ている子は三割増しで可愛いとか言うが臨海突破してるな。
「いいもの見た。」
部屋を出て、一階に行き、晩御飯の準備を始めた。
準備をして十五分くらいしたところで階段の方から音がする。
リビングの扉が開く。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。」
曜が何年かぶりにお兄ちゃんと言ってきた。
「いいよ、疲れてたんだろ。」
俺の部屋に居たことは知らなかったことにしておく。
「寝てたの知ってるの?」
「ああ、お前の部屋行って返事こなかったから。」
嘘は言っていない。
「そっか、ごめんね、片付けは私にやらせて、後明日の朝ごはんも。」
「ああ、頼む。」
正直片付けまでが料理だと思っているから片付けもしたいが、さすがにお願いする。
「うん。」
そう言って曜は顔を洗いに行った。
そして料理をしながら考える。
(テストで勝負か、今回は勉強しなきゃいけないか、でもめんどくさいな。)
「ま、それなりに頑張るか。」
そう決意し料理に意識を戻す。
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