第2話 上からくる男

次の日の朝


「眠い。」


私は今まで要と学校行く時間が被らないように早めに出ていた。


昨日は興奮して全然眠れなかった。


「今日からは別に時間気にしなくていいんだ。」


そう思いつつ下に降りる。


顔を洗い、リビングに向かう。


「おはよう。」


「おはよう。」「おはよう。」


両親にあいさつをして、椅子に座る。


お父さんはいつも私の出る少し前に仕事に行く、お母さんは私が出た後に仕事に行っている。


「眠そうだな。」


お父さんが声をかけてきた。


「うん、今日のこと考えたら眠れなくて。」


「なんかあるのか?」


「あったらいいなーって感じ?」


「そうか。」と一言言って新聞に目を戻す。


お母さんが朝ごはんを持ってきた。


「要君のことでも考えてたの?」


お母さんがニヤつきながら聞いてくる。


「教えない。」


お父さんが一瞬反応したが、新聞に意識を戻す。


「いただきます。」


これ以上この話をしたくないので話を終わりにする。


朝ごはんが終わり少しのんびりする。


その間にお父さんが仕事に行った。


「今日はゆっくりだね。」


「うん。」


元々私は朝は弱いので早く出るのは好きじゃない。


「要君と行くの?」


「いや、会ったら行くかもしれないけどわざわざ一緒には行かない。」


「ふーん。」と意味ありげな返事をする。


「もう行く。」


これ以上居たらお母さんに質問攻めされそうなので学校に向かう。


「行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


家を出て要の家の前を通り学校に行く。


(要まだ行かないのかな。)


そんなことを考えながら、学校への道を進む。




うちから学校まではだいたい歩いて十五分くらいだ、だから始業の二十分前くらいに家を出る。


朝は曜と自分の朝ごはんの準備と俺の弁当を用意しなきゃいけないから少し早く起きなくてはいけない。


朝が弱すぎていつもギリギリになってしまう。


「め、起きて、またお弁当準備できなくてコンビニになるよ。」


曜は俺に比べたら朝が強い。


だからたまにこうして朝起こしてくれる。


「それは嫌だな。」


昨日の夜に少しだけ弁当の準備をしているからそれを無駄にしたくない。


後無駄に金を使いたくない。


「でも別にお前が用意してくれてもいいんだぞ。」


ベッドから降り下に向かいながら曜に言う。


「やだ、私に料理をさせたいなら、お金がいるよ。」


「じゃあいいや、起こしてくれるだけで満足だし。」


そんなことを話しながら、洗面所に向かう。


「じゃあ待ってろ。」


「ん。」


曜をリビングで待たせ俺は顔を洗う。


洗い終わり、リビングに向かった。


「適当に作ろ。」


俺が準備を始める。


「そういえば、やっちゃんと付き合ったの?」


今日はトーストに何を乗せるか考えていると曜が話しかけてきた。


(珍しい。)


「フリしろって言われた。」


別に曜に隠すことでもないだろうし素直に言った。


「フリか、ひよったな。」


曜がなにか言っているがよくわからない。


「なに、なんか知ってんの。」


逆に俺が曜に聞いてみる。


「なにも。」


淡白な返事が返ってきた。


(これ以上なにも話さないってか。)


そんなこんなで朝ごはんを済ませ、片付けをしている間に曜は学校に向かった。


後十分で俺も出なくてはいけない。


その間にスマホを開く、別にやることはないが。


「よし、暇だからもう行くか。」


鞄を持ち玄関に向かう。


「いってきます。」


誰もいない家に挨拶をして家を出る。




学校に着きいつも通りのんびり過ごす。


だがいつもと違ってクラスの奴らがこっちを見ている。


(なんだ?まぁいいか。)


見られているのを気にせず始業を待つ。


ホームルームが終わり一時間目の準備をしていると。


「清水君進藤君が呼んでるよ。」


クラスの女子に声をかけられた、ちなみに名前はわからない。


(進藤って誰だ。)


頷き入口を見る。


目があまりよくないのでよく見えないが周りの反応から有名人なのだろう。


入口に向かう。


近くで見るとわかるが、おそらく、イケメンと呼ばれる人種だろう。


(そんなのが俺になんのようだよ。)


「なにか?」


進藤に声をかける。


「お前が清水か、黒崎が好きだって言う。」


周りがざわめく。


「なでしこさんが好き?あの人を?」「なんであんな人を。」など小声で言っている。


(少しくらい言う場所考えろよ無能が、陰口も言うなら陰で言え。)


なんてことを考えていると。


「おい、無視するな。」


進藤が俺の肩に触れてきた。


「あ?」


急に触られて低い声が出て睨みつけた。


(やばいやばい、一瞬だから大丈夫かな。)


進藤の方を見る。


「悪かった。」


進藤が謝ってきた、怯えられてしまった。


「で、俺は清水だがそれがなにか。」


進藤の話に返事をしてなかったので返事をした。


「そ、そうかいや、黒崎がお前を好きって言うからどんなやつなのか気になってそれで。」


完全に怯えている。


「で?」


だからといって俺の平穏を壊した罰は受けてもらう。


「いや、お前に黒崎は不釣り合いだから身を引けと言いに。」


進藤が怯えながら喋っている。


「それ、俺関係ないだろ、あいつが勝手に好きになったんだろ。」


沙耶が言うには俺らはまだ付き合ってはないようだからこれでいいはずだ。


「いや、黒崎の話だとお前とは付き合ってはないけど好き同士だと」


(は?)


「あの女。」


さっきよりもっと低い声が出てしまう。


「わかった、あいつの言ったのは全部正しい、そのていで進めていい。」


沙耶は後で説教する、結構ガチで。


「身は引かないってことでいいんだな。」


「ああ。」


別にどうでもいいが。


「じゃあお前が黒崎にふさわしいか見せてくれ。」


(なんでお前に認められなきゃいけないんだよ。)


「何をしろと。」


「次のテスト、俺より高い順位を取れたら認める。」


(なんでこんな上からなんだこいつ、うざいな。)


「別にいいが。」


また周りがざわめく。


「進藤君って一年生の時常に十位以内じゃなかった?」「あの人って頭よかったっけ。」なんてことが聞こえてくる。


俺の一年の時の順位はだいたい五十位行くか行かないかぐらいだ。


「じゃあもういいか。」


進藤にさっさと帰れと伝える。


「ああ、時間を取ったな。」


進藤が帰って行った。


(これで俺が負けたら付き合わなくていいんじゃないか。)


そんなことを考えながら自分の席に戻る。




学校に着いて最初にやること、クラスの人に挨拶をする。


「おはようございます。」


「黒崎さんおはよう。」


「なでしこさんおはよう。」


笑顔で返すが、なでしこさんと呼ばれるのは好きじゃない。


「今日は来るの遅かったね。」


クラスの人に話しかけられた、名前はわからない、昔から人の名前を覚えるのは苦手だ。


さすがに要と違って一ヶ月もすれば覚えるが。


「今日から家でやることが出来たので少し遅くなりました。」


でまかせを言う。


「そうなんだ、大変だね。」


「はい。」


そんな実のない話をして自分の席に帰っていく。


(そろそろ来るかな。)


「黒崎さん、進藤君が呼んでるよ。」


(来た、私と要の架け橋要因。)


「はい、今行きます。」


「あの二人付き合ってるのかな。」

「進藤君がアプローチしてるんじゃない。」「うちの学年の美男美女だもんお似合いだよね。」なんてくだらないことを話している。


私の相手は要しか出来ないのに。


「進藤君なんですか。」


この人は苦手だからあまり話したくないんだけど。


「いや、この前言ってた好きな人を教えてもらおうと思って、前教えてくれるって言ったよね。」


(なんでこの男はこんな上からなんだろう利用しやすいからいいけど、そうだ。)


「私だけじゃなくて相手も好きみたいですよ。」


(要にはああ言ったけどこれで要は断れない、なんだかんだ言って要は優しいからきっと許してくれる。)


そんなことを考えていると。


「そ、それは誰なんだい、君に釣り合う人なのかい。」


(あんたなんかと比べるまでもなく要の方がいいわ。)


なんていうのを顔に出さないように要のことを教える。


「名前は清水要さん、一組です。」


私のクラスは二組、この人は確か三組だった気がする。


「そうか、わかったありがとう。」


私の返事を待たないで行ってしまった。


もう話したくなかったからよかったが。


「黒崎さん、好きな人いるの?」


さっき話しかけてきた人がまた話しかけてきた。


「はい、いますけど。」


「そうなんだ、進藤君と付き合うのかと。」


(ああこの人あれが好きなんだ、趣味が悪い。)


「そんなに話したことないですよ?」


実際進藤君と話したのは三回しかない。


「いや、でも二人目立つから。」


(この人、人の見た目しか気にしてないのね。)


「そうですか、でも私にはお慕えしているお方がいますので。」


そう言って、一礼して自分の席に戻る。


(要はどんな反応するかな。)


そんなことを呑気に考えている。


帰ったら説教されるとも知らずに。


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