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____年 3月 __日


中学生生活最後の登校!この制服を

来て学校に行くのも最後かぁ。

最初の頃はスカート丈なんか長すぎ

たのに、今は折らなくても勝手に短

くなってくれてる。

髪も伸びたし、ちょっとは大人っぽく

なれたかな。

みんなに卒業アルバム、たくさん

コメント書いてもらおう!

行ってきます!!


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あの不吉な内容の手紙とは一変、全くもって普通の話が書かれていた。

「全然おかしくないよね?見ても何もないじゃん…。」

やっぱりいたずらだよね、とそう自己完結させ、日記を閉じた。

新しいダンボール箱を開けて、その中へとしまう。

「つぎつぎ!高校生の頃の日記読もう。」

2冊の日記と同じぐらい、ぼろぼろな日記を取り出し、目線を移した。


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____年 4月 __日


高校生になった!受験頑張って志望校に

合格できたし、学校と家は遠いけど

3年間頑張っていくぞー!

部活はどこに入ろうかなぁ…。

今日の入学式で、お母さんが写真

撮ってくれたから一緒に入れておく!


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中学生の入学式と同様、写真も同封されていて、やっぱり3年前よりかは垢抜けている気がする。

「あ、そういえば高校2年生の頃、友達と大喧嘩したような…。」

ぱらぱらと日記をめくった。

「あった。」



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____年 11月__日


仲良くなった美奈ちゃんと喧嘩しちゃっ

た。

さすがにお互い高校生だし、相手の

目の前で泣いたり、大袈裟に無視したり

はしてないけど、やっぱり辛いし、寂し

いから明日謝ろう。


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「やっぱりそうだよね。結局仲直りできなかったんだっけ…。」

あの時のことを思い出して、私は少し落ち込みながらページをめくった。



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____年 12月__日


ちゃんと謝れたし、仲直りもしたけど、

やっぱりギクシャクしちゃった。

明日からも学校に行くの憂鬱だなぁ。

もう、早く高校卒業して大人になっちゃ

いたい。


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「はぁ……。」

私はため息をつきながら、ぺらぺらと勢いよくページをめくっていった。

もう内容なんか斜め読みと変わらなかった。12月のこのページから、日記はほとんど愚痴で埋まっていて、読むに耐えなかった。

「『今すぐ日記を閉じろ』ってそういう事?昔、全部読んだ時の私が書いたのかな…。」

卒業式のページにたどりついた。最後だけはしっかり読もう、と決意して開いた。



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____年 3月 __日


高校生活最期の登校日。何だかあんまり

充実していなかったように感じる。事実、

この日記も明るいこと、ほとんど書いて

ないし…。

でも、進学先も決まっているし、あんま

り気負わずにいこう。


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なんとか最後ぐらい、明るくしようと振舞っているのが見て取れる。

実際、記憶の糸をたどってみても、あまり楽しかった思い出はない。

「なんか、引越しの前に暗くなっちゃうな…。」

昔の私のせいで、今の私が影響を受けているのは、すごく馬鹿らしい気もする。

「…あれ?まだ続きがある。」

もうどん底まで気持ちが落ちていた私は、大して期待もせずに、ページをめくった。

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