第5話・「たまには遠征の仕事もやってみるっス」
プラプラとヌギヌギは、空中に浮かぶ大鍋に乗って【モフモフ群島】の中にある一番大きな島にやって来た。
島の
まるでアチの世界にある、地中海の港町のような建物が山肌に建造された、青っぽい壁と屋根の美しい町並み──山の山頂には西洋風の青い城も見える。
絶景を眺めながら、ヌギヌギが言った。
「美しい港町ですね……軍旗が立てられていますが、戦いが行われているなんて信じられません」
「数百年に渡って島を二分した戦いが行われ続けていて、負傷者も出ているっス……その片方に、あっしらは呼ばれたっス」
プラプラとヌギヌギが、桟橋に立っていると物々しい出で立ちの男たちが数人やって来て。
プラプラに頭を下げた。一人の男の手には青い花のヌイグルミがにぎられている。
「お待ちしておりました……さっそく、戦場の本営の方へ」
プラプラたちは、男たちに案内されて、港町から少し離れた島の平原に来た。
風景が一変した荒野の戦場では、二つの軍隊が衝突していた。
「てめぇらの先祖が、数百年前に、青い姉お后さまのプディングを盗んだんだろう!」
「言いがかりだ! そっちこそ赤い妹お后さまが、楽しみに取っておいた、ゼリーを盗んだんだろう!」
戦闘の怒声や悲鳴、あちらこちらで煙幕の白煙が昇って広がっている。両軍の兵士たちは銃剣のようなモノを持って戦っていた。
本営テントがある小高い丘から、プラプラが説明する。
「この島には、元々真ん中に紫色をした一城と、一つの国しか無かったっス……数百年前に、仲良く島を統治していた姉妹后に悲劇が訪れたっス」
「それが、オヤツの盗難ですか?」
「そうっス、今となっては真相は不明っスが。東西に国が二分されて、それぞれの国城が築城され、城を中心に町が生まれ。元々あった主城は戦いで破壊されて城跡が残るだけっス」
プラプラは、ヌイグルミの骨つき肉をかじりながら、仕事の依頼をしてきた男に訊ねる。
「再確認っス……長い戦いを終わらせたいから、敵の軍をヌイグルミに変えて殲滅したいと……その依頼で間違いないっスか?」
「はい、お願いできますか」
「報酬金次第っス……これだけ欲しいっス」
プラプラは、人差し指を一本立てる。
「百ケルナですか?」
「パカ言っちゃいけないっス、桁が違うっス……百万ケルナっス」
「ひっ、百万ケルナ!?」
「明日までに、よく考えて答えを出すっス……海を渡ってきて疲れたから、今宵の宿を用意するっス……お金を払うのがイヤなら。一泊したら、あっしらはヌクヌクな島に帰るっスから」
プラプラは、少し冷ややかな笑いを含んだボタン目で、青の兵士たちを眺めて言った。
「あっしは、この指一本で楽しくお仕事をしているっス……なまらパネェ」
用意された宿でベットに寝っ転がったプラプラに、ヌギヌギが質問する。
「本当に戦争に荷担するんですか……師匠」
プラプラは何も答えずに、ヘソ出しの腹を擦って、腹筋の成長具合を確認する。
「なかなかいい感じに、見せ筋が整って成長してきたっス……女性らしいキレイな腹筋っス」
開いていた窓から飛んで入ってきた、ヌイグルミの鳥がくわえていた丸めた手紙を受け取ったプラプラは、手紙に目を通してから。
ヌイグルミの赤い花を一輪、ヌイグルミ鳥にくわえさせて飛び立たせてヌギヌギに言った。
「明日は朝早いから、もう寝るっス……面白い光景が見えそうっス」
翌朝、青の兵士たちが宿にやって来て、プラプラが要求した金額を支払うコトを約束した。
「それじゃあ、戦場に行って仕事するっス……今日の戦闘開始は何時からっスか?」
すでに、島を二分した戦闘はイベント化していた。
「午前中の十時から開戦です」
「朝食を食べてから行けば、ちょうどいい時間っスね」
宿で朝食を済ませた、プラプラたちは戦場へと向かう。
青の三角炎旗と、赤の三角炎旗がぶつかり合う戦場──互いをののしり合う声が響く。
プラプラの近くに立つ、青い軍の男が言った。
「今日は、やや青の軍が劣勢のようです……プラプラ先生、お願いします」
プラプラが、人差し指を横にサッと振ると。
赤い軍の兵士たちが、ポンッポンッポンッと白い煙に包まれて、小さなヌイグルミの兵隊さんに変わった。
パニックになる赤い軍の兵士たち。
「うわっ!? なんだコレ?」
「ヌイグルミになっちまった?」
ワイワイ騒ぎながら。戦場を走り回る赤い兵士たちを見て、プラプラの近くにいる青の男は腹を抱えて笑う。
「あははははっ、いいぞ! そのまま、ヌイグルミになったやつらを蹴散らせ! 捕まえて燃やせ! 串刺しにしろ!」
プラプラが、もう一度、指を水平に動かすと
今度は青い軍の兵隊たちがヌイグルミに変わった。
驚く、青い軍の男。
「どういうことです? これでは約束が違う! ヌイグルミに変えるのは赤い軍の方だけのはず?」
冷ややかな目で、男を眺めるプラプラ。
「ヌイグルミになった敵を、いたぶる魂胆なのはは最初からわかっていたっス……実は赤い軍の方からも、青い軍を百万ケルナでヌイグルミにして欲しいと、依頼されていたっス……不公平がないように両軍をヌイグルミにするっス……おまえもヌイグルミになって転がるっス! なまらパネェ」
プラプラが、男たちを指差すたびに、ポンッポンッポンッと白い煙に包まれて〝動くヌイグルミ〟に変わる。
「うわぁ!?」
「ヌイグルミになっちまった!」
キャピキャピワイワイと、戦っている青と赤のヌイグルミたちを眺めてプラプラは、腹の見せ筋を撫でながら言った。
「さてと、楽しく一仕事終わったから宿に帰るっス。二百ケルナが届いているはずっスから……なまらパネェ、この島にはもう少し滞在するっス……まだ、面白いコトが起こりそうっス」
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