第27話 『モデル、ショウのプロ魂』
「あら、あなたのサラダ美味しそう」
いつもの学校の昼休み。
うららとさやかと3人でテーブルを囲んでいた。
そこでうららが開いた弁当は、やはりサラダが敷き詰められていた。
しかし今日はやけに手が込んでいる。
まるでシーザーサラダだ。
私の呟きに、うららは少し照れながら「へへへ」と言って続ける。
「明日大会なの。だから減量は今日でお終い」
さやかと私が歓声を上げる。
「明日?!頑張ってね!」
「大丈夫よ、うらら、私よりダイエット頑張ってたし」
うららは和やかに微笑む。
「ありがとう」
うららはそう言って、サラダに箸をつける。
「そのシーザーサラダの作り方教えてくれない?もう2日目にして心折れそうなのよ」
今私の目の前にはアジフライ定食が並んでいるが、夜はサラダやヨーグルトを食べるようにしている。
これも倉岡の指示だ。
朝は水を飲んで卵やサラダ、白ご飯など栄養やエネルギーになるものを摂る。パンはダメだと言われた。
朝イチは体が養分を超吸収するらしく、出来るだけ体に良いものを食べるのがいいらしい。
そして昼食は好きなものを食べていい。ただし腹八分目まで。
だから今日の私の定食は1つだけなのだ。代わりにライスは大盛にしてもらったが、私の腹では一杯にはならない。
そして夜。
夜が一番カロリーを抑えなければいけない。
そのため、夜はサラダやチキン、スープや豆腐など低カロリーな夕食を食べている。
が、2日目にして心が折れそうである。
少しでもサラダを美味しく食べられるならと、うららに尋ねた次第だ。
「いいよ!月曜日でもいい?」
「ええ」
月曜日か。
今日から月曜日まであと3日。
今日は倉岡と付き合って早一週間だ。3日後となれば、もう二週目を半ばに差し掛かる。
私の頬を一筋の冷たい汗が流れる。
後3週間足らずで標準体型だと・・・・?
今更気付いたが無理ではないか???
最初の一筋に続き、ダラダラと冷や汗が滝の様に流れる。
「綾乃ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ?」
うららが心配して私の顔を覗き込んでくる。
――これは・・・・諦めてもいいのでは・・・??
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フラッシュが瞬く。
「はい、次は顎に手を付いて流し目でこっち見て!」
俺は溜め息をつき、指示通りのポーズを取る。
「いいねいいね!!今日もコンディションいいよ!ショウくん!!」
そうだよ、俺はいつもスキンケアに食生活、運動に気を遣っている。
コンディションが悪い日なんてない。
しかし納得いかない。
「はい、次は香水持って掲げて見上げて!」
「断る」
「????!!!!!!!!!―――えっ、ショウくん??!!!」
カメラマンの声を無視し、彼からカメラを奪う。
「ちょちょちょ!!!何してくれてんの!!」
怒るカメラマンを横目に、俺は小道具さん達に声を掛ける。
「緑の背景ある?うん、そう。時間かかってもいいから取って来て。で、照明さんはもうちょっと暗くして。もうちょっと、まだ、うん、それくらい。マネージャー、次の仕事、15分遅れるって伝えて」
俺に従う周りを見て、カメラマンも沸々と湧く怒りをどこにぶつけていいか分からなくなっているようだった。
「っど―――どうして・・・・」
俺はカメラマンを上から見下ろす。
「――――これ、香ってみた?」
俺は香水を見せる。
「も、もちろん!!!名前通りフルーティで甘い香り!!!だから赤の背景に白のスーツで女の子が使いたくなるような可愛いイメージで―――ちょっと!!どこ行くの!!!」
俺は途中で聞き飽きて歩き出す。
アイツは何も分かってない。
今回の香水の香りは『パッセファーム パルファム』。
『野イチゴ』の香りを連想する香水なのだ。
カメラマンの言う通り、イチゴを連想させる赤を基調としたイメージは間違ってはいないが教科書のように面白味がない。
何故、
それを分かっていいればこんなテンプレートな撮影にはならない。
さっきの写真では、これからの季節に並ぶ香水たちに引けを取ってしまう。
俺がこのブランドの看板を背負うのだ。
『普通』じゃ許さない。
俺は宙を睨み付ける。
白いスーツの羽織を脱ぎ、衣装を替えるべく更衣室へと入った。
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