第18話 『やっぱり倉岡はイケメンでした』

待ち合わせの日。


私は朝からパンケーキを食べた。

が、いつもと違うのは水を腹いっぱい飲んだ。それだけ。


すると不思議、胃の中でパンケーキが水を含むのか、いつもより食べられなかったのだ。

三枚食べたところで「ご馳走様」と言うと、母さんが病院に行けと言い出した。


優越感。


今までの私を越えたような気がした。

そうよ、私は変わったの。今までの私とは違うの。


ということで、朝からダイエット初日の絶好の切り出しに気持ちは既にハイだ。


さ、倉岡の話に戻ろう。


倉岡の家に行くということで、家はどこかとアイツに尋ねると、とりあえず学校に来ておけと言われた。


迎えに来てくれるのか。

まぁ、ちょっとは彼氏らしいじゃない。


と、ちょっと倉岡の株は上がった。


となると後は服だ。


私はサバサバした性格なので、割りとメンズファッションが似合う。


ジーンズに白T、タイトパンツにカットシャツなどなど。


んーーーーー、デートに着ていく服じゃないよなぁ。

まぁ、私って背高いからなんでも似合うし、いっか。


そう思っていつも通りの服を着て来た。

彼氏に会うからって気合入れるのも何だか中高生の恋愛みたいでかっこ悪い気もする。

そうよ、私は私らしくしてていいの。だって、充分可愛いじゃない。あとは痩せるだけなの。


そう思いながら正門前の木陰のベンチに腰掛け、スマホでニュースをチェックしながら倉岡を待っていた。


目の前は車道。

色々な車が行き来するのを遠目に眺めていた。


あ、プリウス。運転してるのは・・・やっぱりおじいちゃんね。

そしてあれはヴェルファイア。お父さんしてそうな顔。チャイルドシートも載ってる。

おおおおっ!フェラーリ?!?!珍し!!!しかも黒ってセンスいいわね。は、乗ってる人超イケメンじゃん―――って、あれ??ウインカー出してる。こっちに曲がってくるのかしr―――


私は絶句した。


黒いフェラーリは近くまで来ると、私の目の前で停車したのだ。


「・・・・・え??」


私は何故フェラーリが私の目の前で停車したのか必死に思考を巡らせた。


しかし私の中で答えが出るよりも先に、答えが分かった。


フェラーリの運転席のドアが開き、すらりと伸びた脚が華麗に地面を踏む。

それに目を奪われていると、その人物はドアから身を乗り出した。


白いカットシャツが緩く風に揺れ、黒いサングラスに小さい顔が映える。

黒髪は敢えてか下ろされ、ラフな格好でもスタイル抜群でまるでモデルだ。

そしてどこかで見たことがある気がする―――


その人物は私を見た。


うっわぁぁぁぁぁぁぁ、なにこれ、夢?

何で私、イケメンに見つめられてるの???


サングラスの奥は漆黒で、何を考えているのか分からない。

それがまた、セクシーさを掻き立てていた。


と、その人物が口を開いた。


「おい、デブ」


んんん??????????????


「・・・・・・はい??」


今、このイケメンなんて言った???

見惚れすぎてて何言ってるか全然聞いていなかった。


イケメンは表情を変えずに言葉を発す。


「デブって言ってんだろ。ほら、長居したくねえから早く乗れ」


イケメンは吐き捨てるようにそう言うと、また運転席に乗り込んでしまった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・アーーッッッ!!!」


気付いてしまった!!!


このイケメンは―――――――


私は運転席の窓に張り付いた。

イケメンは迷惑そうだというように眉間に皺を寄せ、サングラスを取った。


そう、何度も見た顔。

あのウザくて、嫌味で、いけ好かないあの顔が、目の前にあった。



「倉岡ーーーーっっっ!!!!!!」


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