第12話 『謎の人気モデル「ショウ」』
マヨネーズと塩コショウをふんだんに盛り付けた熱々カリカリの唐揚げを白米と一緒に口にねじ込む。
唐揚げのカリカリの衣を破って肉汁が溢れ出し、マヨネーズと塩コショウの旨みと塩味が『美味さ』を集結させるが如く白米に合わさる。
「はぁ・・・・・・幸せ・・・♡」
喉を通って胃におりていく唐揚げと白米たち。最後の最後まで飽きないこの味。至福♡
そしてその合間にロコモコ丼!!!!
ハンバーグに掛かったタレがレタスにも良くマッチする。ポイントはハンバーグだけ、レタスだけでなくハンバーグ、レタス、白米全てを同時に口に入れること!!
1つでも欠ければそれはロコモコ丼ではない!!ロコモコ丼の良さを最大限引き出すのに必要なのは大きな口なのだ!!!!
そう考えながら私は大口を開けロコモコ丼をほお張る。
あーーーーーーーっ!!!さいこぅーーーーっ!!!♡♡♡
私は幸せを噛み締めながら周りを見る。
人、人、人。
食堂は腹を空かせた学生たちでごった返している。
昼休みの学生たちの宿敵は『場所取り』。
グループが大きくなれば大きくなるほど、人数分の席を確保することが難しくなる。
私もこの間までその中の1人だった。
最低3人、多い日は6人ほどの場所取りをしなければならなかった。
だが今私は1人!!
席も流れるように確保してゆっくり出来る時間がグッと増えた。
ただ1つ問題なのは、話す相手が居ないこと。
私はスマホを開いた。
まっ、ご飯食べながら動画でも見れば有意義な時間になるけどね。
流れるように開いたYouTube。オススメ欄に『人気急上昇中のイケメンモデル、ショウの独占インタビュー!!』という題名の動画が上がっていた。再生数は500万を超えていた。
ショウは突如業界に姿を現した高身長イケメンモデル。
寡黙で目がセクシーでスタイル抜群。
オマケに彼の年齢、私生活、家族構成、趣味など多くの部分が謎に包まれている。
その謎の多さが民衆の興味を焚き付けていると言っても過言ではない。
学科内にもファンは多く、『ショウ』と名前の彫られたチャームや彼をモチーフにしたネックレス、ブレスレット、彼の写真の入ったTシャツなどをよく見かける。
彼に関するグッズもショウ自身が考案、デザイン、販売まで手掛けているらしく、またそのデザインセンスが抜群でグッズの売上はうなぎ登りだという。
まさに、カンペキ☆
私も恋人にするならこれくらいの人じゃないと無理よねぇぇえ。
私は動画の再生ボタンを押した。
人気YouTuberの女が話し始める。
『はいっ、パワフル全開今日もスマイル♡みんなとキラキラ、内ノ瀬キララですっ☆
さて!!今日はですねぇぇぇ、なんとっ、大人気特別ゲストに独占インタビューということでね!!
まっ、もう題名に出ちゃってると思うんですけどっ!!笑
そう!今回特別に!!あのショウ様に来ていただいています!!
マジでヤバいっしょ?!?!
キララ頑張ったんだから!!!!』
私は無言で動画下のバーを操作し、ショウが登場する場面まで飛ばす。
コイツ、女女しててあざとくてウザイ。
ショウは長い脚を組み、さり気ないデザインのシルバーリングをはめた指で膝に手を添えている。
黒髪はワックスでパリッとセンター分け。
長いまつ毛から覗く大きな黒目。
シャツからは鎖骨がチラ見して誘惑しているのではないかというほどセクシーだ。
『ショウさんっ、今回はありがとうございますっ!』
キララに挨拶されたショウは、首を少しもたげた。
『まじでキララ、今回了承して貰えると思ってなくてェ!!超嬉しかったデスッ!!♡』
『・・・・・・・・・』
ハイテンションなキララにショウは無反応になってしまった。
『んじゃんじゃさっそく、質問いいですかァ??』
ショウのノリの悪さを一切気にすることなく進行を続けるキララ。この空気の読めなさが彼女をここまでビッグにさせたのだろう。
『まずでずね、ショウさんって何歳ですか??』
『・・・ナイショです』
『ですよねーっ!!事務所のプロフ見させていただいたんですけどもぉ、載ってなかったです!!あっ、身長は184でしたっけ??』
『・・・そうっすね』
『たっかぁぁぁい!!さすがモデル!!何か幼少期にたくさん牛乳飲んだとかぁ??』
『・・・いや、別に・・・』
『ジョーダンですよ!ジョーダン!!ショウさんってば超かわいいっ!!♡♡♡』
というふうなテンションで次々と質問が続くが、ショウからはまともな返答は得られなかった。
大層なタイトルだったが、蓋を開ければキララがハイテンションでショウに話しかけるだけのうっっっすい内容だ。
「つまんな」
私はそう言って動画を閉じようとした――が・・・
どアップにされたショウの顔。
肌もキメ細やかで綺麗なのだがそれより――
「――カラコン・・・??」
ガタッ
「わっ!!」
突然の物音に小さな悲鳴をあげる。
私の向かいの席は空席だったはず。
そこに人が座っていた。
黒くモサモサの髪にダサいメガネにダサいTシャツ。
その人物が顔を上げた。
長いまつ毛に色素の薄い瞳――
「倉岡?!?!」
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