第2話 『女子ってホントめんどくさい』
全く、昨日の倉岡、本当に同一人物なの?
学校の食堂で、チキン南蛮定食と豚の生姜焼き定食を並べながら思い出す。
『失せろ』
「ムキ――――ッ(# ゚Д゚)」
力一杯割りばしを割る。
陰キャが私に向かってなんて口を利いてんのよ!立場をわきまえなさい!立場を!!!
「綾乃さん、どうしたの?」
すると、一緒にテーブルを囲む女子のうちの一人、さやかが様子を伺って来た。
この子は学科一かわいいとされているふわふわとした女子。
暗めの金に照明が当たってきらきらと輝き、赤味のあるアイメイクが小動物感を倍増させている。
優しくて、頭も良い。
へっ。『類は友を呼ぶ』って、まさにこのことね。
私と一緒にいてふさわしい人間だわ。
それはともかく、昨日の出来事でストレスが溜ったといったらありゃしない。
「病院でバイト始めたんだけど、一緒に働いてる奴が陰キャのクソ野郎でね。私に『デブス』とか言いやがって舐めてんのよ!」
私は舌をまくしたてるように話すと、定食をガツガツと口に放り込んだ。
はぁ、この生姜焼きのタレ、ご飯の相性さいこうぅ~~❤
「綾乃さんはデブでもブスでもないよね?」
さやかが周りの子に尋ねる。
「そうだね~」
「全然気にしなくていいよ~綾乃さん」
周りの女子がうんうんと頷く。
私は箸を置いて笑みを浮かべる。
「そうよね~。っていうかぶっちゃけ、私くらいの体形が一番良いと思うんだけど。何か最近の女子ってガリガリが良いみたいな風習あるじゃん?あれウザくね?」
するとその場にいたダイエット中だという女子一人がもじもじし出した。
うららだ。
うららの前にはサラダのみが詰まった弁当箱が広げられている。
そう、この子はこれ以上痩せる必要はない。
少々むっちりしているが、何故それでいいと気付かない。
「それでサラダばっか食べるなんてばっかみたい。食はエネルギーや幸福感の源よ。それを削減してまでガイコツみたいな体形になりたいなんて。看護の勉強足りてないんじゃない?フフフ」
私はあえてうららの方を見ずに言う。
でもあなたのためよ、うらら。男にモテる体形してんだから勿体ないわよ。
するとうららは顔を伏せたまま無言で立ち上がり、足早に何処かへ行ってしまった。
「ちょっと綾乃さん!どうしてそんなこと言うの?」
さやかが泣きそうな目で私に訴えかける。
「は?なんであんたが泣くのよ」
私は構わず食事を再開する。
「あのね、モテる体形っていうのはああいう体形なのよ。それにサラダでダイエットしようなんて馬鹿らしい。あんな昼食じゃ午後の授業も頭回らないわよ」
「でもうららが自分で決めてやってることだよ?」
「あーうるさいうるさい。じゃああんたフォローすればいいじゃん。これは私なりの優しさなの」
そう言うとさやかは黙ってしまった。
悲しそうな顔でチクチクと食事をつまみだす。
なんなのこいつら、アホなん?
そうやって女子はお互いかばいあって成長しないのよ。
まぁ、うららもさやかも、時間が経てば私が正しかったってすがりついてくるはずよ。
すると、一つ先のテーブルで、一人の人物が一連の様子に耳を立てていたらしく、こちらを凝視しているのに気付いた。
あ?何あのだっさいTシャツ。量産型のやっすいメーカーのやつね、きっと。しかもメガネとあのもさもさの髪、最高にブサイク・・・――
「あーーーーーーーーーーっ!?」
私の口から米粒が乱射される。
なんとそれは倉岡だったのだ!!!!!
倉岡はそんな私を軽蔑の眼差しで睨みながら、丁寧に味噌汁を啜っていた。
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