第3話 『これは涙……泣いているのは私?』
こちらを睨みながら定食の味噌汁を啜る倉岡。
その冷静さがいちいちムカつく!!
何であいつがここにいんのよ!?!?!?
「ち、ち、ちょっとお手洗い!!」
そう言って私は席を離れた。
タッタッタッ・・・―――ダンッ!!
私は倉岡のテーブルの前に立つと、テーブルに両手を叩きつけた。
「倉岡ぁ。何であんたが私の学校にいんのよ~」
怒りと気持ち悪さに歯を食いしばりながら睨み付ける。
どうやら倉岡は一人で昼食を取っているようだった。
ふんっ。そうよ、あんたにはボッチがお似合いよ!
倉岡はまたもや冷ややかなな目で私を見ながら、今度は生姜焼き定食の豚に箸を伸ばす。
「人が話してんのにのうのうと食ってんじゃないわよ!」
私は箸を伸ばそうとする倉岡の手を掴んだ。
バッ!
「きゃっ――!」
突然、私の手は大きく振り払われた。
「触んな」
倉岡が低い声で冷たく放った。
な、なんなのコイツ・・・――!!
何にキレてんのよ!マジ意味わかんない・・・
陰キャっていつキレるか分かんないし、キモいし、ムカつくし・・・
陰キャって・・・・陰キャって・・・――
「?!?!?!」「?!?!?!」
倉岡の目が大きく見開く。
私も、自分で驚いてしまった。
私の頬を涙が伝ったのだ。
慌てて涙を拭きとる。
こんな陰キャの前で泣くなんて一生の恥!!
てか何で涙出てんのよ!!なんで泣いてんのよ私!!
慌てたのは私だけじゃない。
倉岡もどうすればいいか分からなくなったのか、目をきょろきょろとさせて箸を置く。
「・・・・・・ん・・」
あーーー。今「ごめん」って言ったんだろうなぁ。
止まらない涙に反して頭は冷静だった。
しかしそれに答える余裕もなく涙が流れる。
周りがざわつきはじめた。
あーダル。
私、すぐに泣く女って嫌いなのにな・・・
その時、私の腕が掴まれた。
顔を上げると、目を逸らした倉岡だった。
仏教面で、強気な顔をしているが動揺しているのは明らかだった。
倉岡は無言で私の腕を掴んだまま歩き出す。
「ちょっ――ちょっと!!」
倉岡を止めようとするが、力強く止められない。
あぁ、倉岡も男なのだ。
『黙れ』
「・・・・!!!////////」
壁に押し付けられ、冷たく言い放つイケメン倉岡のことを思い出してしまった。
あのイケメンが、今私の腕を握って引っ張っている。
心臓がバクバクと波打つ。
もーーーーどうにでもなれ!!
引っ張られながら食堂を出る。
一体全体どこに行こうと言うのか。
その時、倉岡がやっと止まった。
「・・・・」
「・・・・・・・・」
倉岡は振り向かない。
私も、何と声を掛けていいか分からなかった。
先に口を開いたのは倉岡だった。
私の腕を握っていた手のひらをこちらに向け握ったり開いたりした。
「お前、腕太すぎ」
そう言う倉岡の顔は、いつもの冷ややかなムカつく顔の倉岡だった。
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