第41話 埋める人なら誰でも?
恋を自覚してないパターンではなくて、恋を知らないまま付き合ってるパターン。色んな恋があるから、一概に悪いとは思わないけど、それは結構問題なのは間違いない。
もしも彼氏さんが本気で好きだったなら、それを聞いたらどう思うか。好きじゃなく付き合って、後々好きになることもあるが、それでも今の現状を知るに、その可能性も薄い。
マジか……。
それでも、早乙女さんは好きってことの意味を知らないだけで、多分恋はしているのはしているはず。じゃないと、男子を見たら欲情して触れたくなる変態のような人になる。そうではないと、この短い付き合いで知ってる。恋とは何かという哲学的なことを、悩んでるなら、俺の頭では面倒として片付けられるんだが。
「好きって、基準がないからな。その人のハードルがあるから、アドバイスを誰にも出来ることじゃないけど、彼氏さんのことを考えたら話したいとか、触れたいと思うならそれは恋してるんじゃないのか?」
本当に知らない。今まで恋愛なんて興味なかったし、周りでそんな話がざわつくこともなかった。今になってその弊害が……俺には、彼氏さんが浮気してても解決なんて難しいかもしれないな。
「うん。だけど、私はそれで満足するから、好きじゃないのかなってなるんだよね。恋してる子に聞いたら、いつも寂しくなるとか満足しないとか言ってて、私にはない感情を言ってくるからさ」
「人に振り回されるタイプなのか?自分の恋はこうだって、決めて思えばいいんじゃ?」
「んー、考え過ぎ?」
「多分。だって、下校も休日も一緒に居たいって思うなら、それが満足してないってことだろ?」
「それも最近は無くなって来たんだよね……」
無理無理。あー、俺には触れてはいけないとこに触れてる気がする。
恋愛というものは、興味ないからと避けるべきではないことを学んだ。どうしてこうも理解の及ばない、難しい話をされるのだろう。これなら義務教育で、恋愛の面倒さについて語ってほしいくらいだ。
「慣れて落ち着いてきたんだろうな」
早乙女さんは多分、心が満たされることを望んでいる。俺への関わり方でしか判断出来ないけど。性格的に1人が嫌で、それをカバーしてくれる人を欲していた。その時に彼氏さんと出会って楽しさを得た。けど、今は俺が居てその心配も無くなった。
もしこれが正解ならば、恋とは恐ろしいのだと、心底思う。
「かな?最近は七夕くんも居るから、その分満たされてるのかも」
「彼氏さんと比べたらもやしみたいなもんだろ。雑食でも流石にもやしより高級肉の方が好きだろうから、満たされるなら相当な変人だな」
自分でも彼氏さんから満たされてるのか分かってない。恋をしているのか曖昧。やはり早乙女さんは、寂しさを埋めてくれる人が、たまたま異性だっただけで、本当は恋をしてないのではないだろうか。
家庭環境がどうだったのかは知らない。だけど、何か理由があって早乙女の姓に戻ったのだから、どうしても【寂しい】に耐えられない理由があったのかもしれない。だから、恋を知らずに付き合ってることを悪いと言えない。本人も、悪いと思ってやってないのだから。
幽、助けてくれ。知らないって言うだろうけど。
「姉が変人なら弟も変人だよ」
「一緒にするな。姉が変人なおかげで弟は良く見えるんだよ。見たことないだろ?俺の変人なとこ」
「夜徘徊するとこ」
「なるほど……それは一理あるな」
散歩を変人と言われてるような気分だが、夜に何も考えずにフラフラ歩き回る散歩は、変人として思われても無理はない。
「でも、意外と真面目なのに話しやすいのは不思議。冗談が通じるし、落ち着いた人だし、気分を悪くすることもないし」
「落として上げられるの初めてなんだけど、普通に嬉しいな」
「本当のことだからね。家族のいいとこを見つけるのも、新しい家族の関わり方の醍醐味だよ」
「早乙女さんのいいとこを見つけれてないのはヤバい?」
「ヤバいを超えて酷いだね」
「これまで拗ねるとこの印象が強くて、いいとこを思い出せないんだよな」
現在進行系で拗ねている。理由は間違いなく俺がいいとこを見つけてないから。でも、こればかりは許してほしい。早乙女さんを見ることはそんなにないし、誰もが知って言う美少女だの天真爛漫だの、そういったありふれたイメージが強いから思い浮かばない。
「次から毎回拗ねようか?」
「自覚あったんだな」
「あっ……ないけどね」
「あっ……って言ったけど?しっかり間もあったし」
「空耳だよ」
体をベッドに倒しながら、その表情を見せないように動く。そんな嘘が通用するわけもないのに、最後の最後まで拗ねるとこは妹のようだ。
「うわぁ、もうこんな時間かー。寝に行かないとなー」
「23時12分……明日も学校だから寝ないとな」
「早かったね。霊と会わなかったらもっと話せたのに」
「別れ際にそんなこというなよ」
倒したばかりの体を跳ねるように起こして、再び顔を合わせた。
「冗談だからいいの。ふわぁぁ……っと!寝る時間って思ったら眠くなってきちゃった。それじゃ、また明日ね」
「また明日。おやすみ、姉さん」
言った瞬間に振り向いて、俺の体を強く抱きしめに来た。
「おやすみ!弟よ!」
「寝れなくなるって……」
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