第32話 ややこしくて騒がしい
昼休みに入り、昼食を食べながら俺たちはいつも通りの雰囲気で会話を続けていた。翔は俺らよりもワイワイしている系の、所謂陽キャと言われる人たちと食べてるので、隣の幽だけが俺の仲間。
昼食はいつも同じ。菓子パンに野菜ジュースだけで、少食な俺には満足出来る内容。もちろん幽と似ている。飲み物がカフェオレか野菜ジュースかの違いだけだ。
そんな俺たちは、今朝の引っ張られる話の内容をどんどん引き伸ばしていた。
「やっぱり浮気調査しようよ」
「それは後で、思い込みで間違いだったら、それまでのことが無意味になるし、罪悪感も感じるだろ?罪悪感に関してはもう十分なんだ」
家に帰れば距離感の分からない彼氏持ち美少女が、仲を深めようと必死に会いに来るんだから、もう罪悪感に押し潰されて立ちくらみを起こしそう。
幸い、俺の中で彼氏さんの印象が、めちゃくちゃいい人ではないので、疑うこととかに強めの罪悪感はない。それでも普通にしてはいけないことをしているようで、どちらかと言えば彼氏さんが早乙女さんに浮気調査を初めても良いくらいだ。
「だったら姉さんに頼もうか?秘密守ってくれるし、確かその彼氏さんとも仲良かったはず」
「あー、
幽のお姉さん。名前を
ちなみに顔は言うまでもなく美少女と言われる人で、幽のおっとりとは真逆の、早乙女さんを超えた元気な人だ。2年生ながらも、副生徒会長という姉妹揃って才色兼備である。
「多分風帆くんからのお願いとか言えば頷くよ。ストレートには聞かないだろうし、ふわっと怪しいか怪しくないかを姉さん視点から判断してもらえば?」
「なるほどな。それは良いかもしれない。お願いしてみるか」
「うん。任せてー」
「助かる」
罪悪感は持ちなくないけど、スッキリはしたい。家族として、可哀想なことをされてるのなら、それを知っていて放置するのは気持ち悪い。
「風帆くんが心配して夜も寝れないって付け加えとく」
「寝てるけど。それに、寝れないとしても、理由は絶対に幽だけどな」
「そんなにゲームに付き合わせてないよ」
「だから寝れないとしても、だろ」
「なるほど?」
早乙女さんとは部屋は別だし、そんなに物事に執着もないからよく寝れる。快眠だし、朝は苦手なのは変わらないが、何1つとして睡眠関係に問題はない。
「でも、風帆くんが変わったようにも見えるんだよね。家族って理由があるのは分かるけど、今までどんな人にも興味なかったのに、人のことを気にするとか、違和感が凄くて風帆くんじゃないみたい」
「それは思う。早乙女さんのことになると、何故か考え込むし、家族としてどうにか良好な関係にしたいとも思うんだよな」
「あー、私の知ってる風帆くんじゃなくなるー。良好な関係にしないといけないじゃなくて、したいって、初めて聞いたよそんな積極的な言葉」
「自分のもの取られたように言うな。同級生が家族って関係は初めてだから、そんな言葉も初めてなだけだ。特別な意味はないぞ」
「風帆くんは私の友達で、死ぬまで私のものだよ。誰かと結婚してもそれは変わらない」
「怖い怖い。恋愛的に好きじゃないのがもっと怖い」
幽のことだから、本当なのかは俺は知らない。だけど、幽は俺に対して一切の恋愛的好意を持っていないらしい。恋愛自体よく分からなくて、面倒で、面白くなさそうという食わず嫌いのように言っていて、それは今後も変わらないという。
「冗談だけど、私との関係が疎かになるのは許せん」
頬杖をついて菓子パンを食べる。目だけはジトーっと俺を見ていて、睨んでるのだろうが、ジト目が可愛くて小動物の威嚇程度にしか効果は薄い。
「それは悪いって先に謝った。早乙女さんと仲を深めれば、だんだん戻ってくるから、その期間は待っててくれよ」
「ん?私の名前を呼んだ?七夕くん」
「…………」
野菜ジュースへと手を伸ばし、幽の背後に姿があるのだと把握するのが遅れた。幽の隣に立つ学年1位の人気者美少女――早乙女澪。タイミングには恵まれてるな。
「来た来た。私のライバルが。今風帆くんは私とお話し中だから戻って他の子と話しときなよ」
「えー、来て早々嫌われてるんだけど」
然程俺への対応と変わらないのも、幽が早乙女さんに心を許している証拠。確かに俺だけじゃないと思えば嫉妬してしまう。
「やっ!
なわけないと、自分でも笑いそうに震える声質で俺を見る。こうして話すのという言葉遣いも中々賢い。学校で話すのは初めてなのだから。
「……そうだけど」
「いつも霊をありがとね。ボッチから助けてあげて」
「いや、俺も助けてもらってるから別に」
「ボッチに話しかけに来る人気者とは思えないけど。早く戻ってよ。私に用事ないなら来る意味ないでしょ?はいしっしっ」
幽に何も用事がないならば、初めて話したという俺にもなにもないはず。だから上手いように早乙女さんを退けようとする。それに対して、ムッとすると早乙女さんは幽の上に座った。
「ダメでーす。暇だから来たんだし、元々用事なんてないからここに残りまーす」
「風帆くん、普通に助けて。この人自己中だし、体重重くて耐えられない」
「あー、確かに。それは知ってる」
2人以外、誰にも聞こえない声で言う。少しいじわるを言ってみるのも、この2人になら良いかもしれない。そう思った。
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