第31話 今日の予定
確定していないことは早乙女さんに伝えても不快にさせるだけ。「彼氏さんに仲のいい女の人いる?」なんて聞いても同じこと。だから伝えはしないが、もし黒でもその時は教えるか迷う。他人の恋愛に干渉してもいいことなんてきっとないから。
「それで言うなら私も結構性格に問題あるタイプじゃん」
「今その片鱗見せたろ。偏見言って」
「あっ、そうか」
美少女で誰からも好かれて、学年1位の頭脳に無所属のくせに無双する球技大会。自分と真逆の立ち位置に居る人間を苦手とし嫌う性格。釣り合いは取れてるとは思わないが、結構酷い性格だとは思う。
まぁ、秀才過ぎて嫉妬の対象になったり、女子からは恋愛とかに興味ないって性格が癪に障って、「私の好きな人が幽さんのこと好きって。ホント、羨ましい。ありえなーい」なんて言われることもあったらしい。
しっかりと二物与えられた上で、災難は振りかけられている。
「ちゃんとその顔に似合ったアホさだな」
「バカにしてる?」
「嫉妬してる」
「性別違うんだから、私の顔になっても良いことないよ?」
「男版になるってことだ。女子からちやほやされたいなーって」
「ホントに?似合わないこと言うとブルブルって身震いするんだけど。風帆くんは風帆くんのままでいてほしい」
「好きだな」
「大好きマンだから」
「ついさっき、誰かに言った記憶が」
ホントに他愛もない。けど、朝から疲れないギリギリのふわふわした会話。テンションも然程高くないので、脳を覚醒させるにはちょうどいい。
校門を抜けて、玄関へ一直線だけ。そこでは多くの生徒が1人で歩いたり、複数で歩いたり。基本1人なのだろうが、俺らのようにタイミングがあって登校してるということだろう。朝から賑やかでいいものだ。
「そんな大好きマンから言わせてもらうと、そのままでもちやほやされてるから良いんじゃないかと思うよ」
「……それってあれだろ?幽と2人がお似合いとかいう冷やかし。そうじゃなくて、自分の理想の俺になってみたいってことだ」
「知ってたんだ。それは夢のまた夢だね。今で我慢しないと、強欲は自分をダメにするよ」
「理想だからな。求めてはない」
「だろうね」
早乙女さんから聞かなければ、今頃なんのこと?と首を傾げていただろう。幽も俺が知ってることに驚きつつも、早乙女さんから教えてもらったんだと即座に気づいたようで、その驚きもすぐに消えた。
玄関に到着すると、一気に学校が始まるという圧に押される。幽と話してると楽しさ故に、こうして嫌なことに強く引っ張られる。関われるのはいいことでも、関わるからより学校が嫌になるのはデメリットかもしれない。
人をダメにする何々の幽霊編だ。
そのまま教室へと向かい、水曜日の朝のホームルームを待つ。時間ギリギリの登校でも、朝に弱い学生は多いためまだ学校が始まらないかと錯覚してしまう。チャイムが危機感を迫らせるが、入学から半年。そこまで気にする人はいなかった。
先に席について隣の人と談笑する早乙女さんも、朝からの元気は彼氏さんから貰ってるのかもしれないと、今この瞬間に思った。元気でいられる理由があるのは良いことだ。それだけ充実した生活が送れるのだから。
「やっぱり気になる?」
早乙女さんを見ていると、幽が横から声をかける。
「関わりを持つと、どうしても気になるんだよな。見間違いであってほしいけど、そうじゃなかったらってもしもを考える」
「調査でもしてみる?浮気調査ってやつ」
「素人がしても意味ないだろ。それにそんなことに時間を使いたくない」
これは他人の恋愛だ。勝手に疑うだけでも失礼なんだから、踏み込みすぎることをしてはよろしくない。知るなら、ふとした瞬間に勝手に知るくらいだ。乗りかかった船とか言い出したら、俺の自由時間もなくなる。
「1人で勝手に悩んどくだけにするさ」
「でも、何かしら緒見つけたら動き出すでしょ?」
「その時はその時だな。流石に放置し続けるのは、知ってる側として気分が悪い」
「私も手伝おうじゃないか」
「助かる」
目は2つよりも4つあればそれだけいい。賢い幽なら間違いなく有能だろうから。
「そういえば、その彼氏さんの彼女さん。今日から学校でも仲良く大作戦仕掛けてくるらしいぞ」
「ん?私には関係なくない?風帆くんが関わられても私にはいつも通りだから」
「俺を助けるってのが加わる」
「普通に私と話してたら良いんじゃない?多分澪が流れはどうにかしてくれるよ」
「他力本願最高だな」
「当たり前」
単に橋渡しのようなことが面倒なだけ。幽と仲の良いことが知れてる俺は、早乙女さんとも仲が良いと思われてるのかもしれない。三角関係ではないし、同じ友人を持つ者同士で仲が良いのはごく普通のことだから。
深く考えなくてもいいか。家で会話するように自然な感じでいけば、問題ないだろ。
「ほら、こっち見てる」
「好かれてるんだね。ここで腕に抱きついてやろうかな」
「鋭く飛んでくるぞ」
会話してたのを察知したか、友人と話し続けながらも視線はちょこちょここちらを覗いていた。腕に抱きついたところで、嫉妬が云々言うのだろうが、未だにその理由が、俺には分からない。
女子限定の、相手より上になってやるというマウント大会ならば結構分かりやすいんだけどな。
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