第23話
――――――――『やあ、チーム
って、耳元からの急な無線通信の声、アミョさんからだ。
「ぁ、はい、」
手と手の間で押し合ってたレモンティーの入ったカップをベンチに、
ちょっと、カップの下を
『お疲れさん。君たちに
「あ、はい。」
「ったくよ・・」
って、斜め下のベンチの、ケイジがなんか愚痴っぽいのも、ちょっと聞こえたけれど。
「EAUへ戻っていいんですか?」
ミリアが無線機を通じて聞き返す。
『うん、
「了解。」
なんにせよ、ようやく
待機指示が出てから今まで、時間を潰しているような形になっていたけどやっと帰れる。
ちょっと胸へ息を吸うミリアは、ガイとかも、伸びをして関節をコキコキしているし、小さく息を吐くミリアも、ちょっとほっとしたみたいで。
アミョさんが
響きが気に入っただけかもしれないし、まあいいか。
「あの、そういえば、元々受けていた調査の件は?どうなりました?」
ミリアが少し思い出して、アミョさんへ
『ああ、
「そうですか、」
それなら問題ないだろう、心置きなく帰れそうだ。
「お前なぁ、よく考えろ?レモンティーとアイスティーの2種類があったかもだろ?」
って。
「・・それだ、」
気が付けば、なにやらガイとケイジが2人でこそこそ、さっきの話の
確かに言われてみれば、『・・配られていた紅茶は2種類あった可能性もある』。
そうか、なるほど・・・まあ、そんなの『どうでもいいんだけど』。
『レモンティーってさ、香料だけしか入ってないのも多いから、味までは変わらないんだと思うんだ?』
って、耳元からのアミョさんが。
「お?聞いてたんすか?」
『まあね。』
ガイも驚いてるけど、アミョさんはどこか得意げで。
『だから市販の良くあるフレーバーが違うみたいなやつは、味自体は大して変わらないってのが僕の経験則さ、安いものとかね。』
『言われてみれば、そんな感じがしますね、』
ガイも深めに同意してた。
というか、ガイの声が無線通信にも急に入ってきたから、アミョさんの方でまたチーム用に設定を操作したのかもしれない。
ふむ、というか。
アミョさんに会話を聞かれてた、ってことは。
任務中だから、今までもずっと記録されていたってことで。
さっきのレモンティーだとかアイスティーだとかで、ケイジと私が
ふむ。
まあ、いいんだけど。
大した話もしてないから別に。
いやでも・・・ちょっと冷静に考えてみたら、私が自分の飲み物をケイジに力ずくで飲ませようと頑張っている、っていうおかしな様子が記録にずっと残るってなるのは、なんか嫌かもしれない。
・・・まあ別に、
『あと、戻ったら呼び出されるかもしれない。覚悟はちょっとしておいてくれよ?』
「はい?」
腕組みをしてちょっと考え事をしていたミリアが、アミョさんの声に引き戻されたけど。
『さっきの件でね、』
『さっきの件』っていうのは、さっきの『アレ』か。
『あの時』に、ケイジとリースが私たちと分かれて行動して。
その後は何事もない顔して戻って来て、無事だったみたいだけど。
『呼び出し』ってことは、報告書よりも口頭で報告せよ、ってことなのかもしれない。
私はまだケイジ達からの報告は聞いていないし、何が起きていたのか知らないから、どう答えればいいかわからないけど。
でも、ケイジ達の報告に付いて行く事になってもそれは
「はい。」
いろいろあったし、後でまたちゃんと報告をまとめないと・・。
『まあ、僕が責任者というわけじゃないから、内情とは言わないまでも、彼も怒ってるわけじゃないみたいだから。そんなに構えなくていいからね。』
アミョさんが言ってる『彼』とは、今回のEAUの方の責任者の事みたいだ。
そういえば、いま言われるまで今回の責任者を気にしていなかった。
『俺たち、かなりの
って、ガイが苦笑いに言ってたけど。
『『噂のルーキー』、だろ?順調に噂が広がっているね、』
『あれそういう意味だったんですか?』
『はは、どうだろうね?騒がせてるのは本当みたいだけど。』
ちょっとからかうようなアミョさんは、
ガイのちょっと笑う横顔や、そんな話を耳に入れながらミリアは同時に、携帯を取り出してアイウェアの画面に表示させていってた。
現在の私たちに回っている情報は特にないし、ここでの任務からは解放されたから、もう既に周囲の色んな表示も消えている。
アイコンや開いた書類の文字を少し目で追ってみても、それらしい情報が無かったのは確認した。
責任者の名前とか、関わっている人の名前も無い。
それはたぶん、私たちのような末端のチームまでには必要のない情報だからで、多角的に見れば情報
そもそも、『IIS(連統合システム)』は訓練でよく使われるけど、警備部の『3I0システム』はこういうものなのかな、って思う感じだ。
市内でこれに触れたのは、今回がほぼ初めてだったし。
私たちも他のチームと同じように、ここに到着次第に自動的に作戦に組み込まれただけだから、緊急作戦本部から必要のある情報だけ与えられるなど、彼らの管理は
まあ、私がEAUの方の管理責任者の名前を知った所であまり意味は無いんだけれど。
事件現場の指揮を
そういえば、さっき現場の指揮官の人が全体通信の上で、現場の人全員に挨拶したようだけど、彼は警備部の関係者と名乗ってたっけ。
直接会う機会とかなんて無いだろうし。
それに・・今言われて気づいたって事は、それだけ私に余裕が無かった、って事なのかな・・どうなんだろう?
『あっちの本部も大体2つ返事だったみたいだしね。ちょっと本部に無理を通したかもしれない程度で、そんな気にすることはないでしょ。』
って、アミョさんに言われて、ちょっと操作の手を止めたミリアは、えっと・・・。
『そんな軽かったんですか?』
傍のガイが、そう聞いてた、耳元からの少し2重音で。
『らしいね。思っていたよりも柔軟だったよ。僕らが過剰戦力だったからかもしれないけど、』
作戦本部の対応としては、簡単に許可が下りたって感じらしい。
確かに、現場には警備部にEPFに特務協戦のEAUなどを集めてまでして、事件の規模を見たら私たちは必要なかったかもしれない、って判断するのはあり得るかも。
遊ばせておくよりは、っていう感じだったんだろうけど。
まあ、初動が大切だからこそ多く集めすぎるのは仕方ないわけで。
そのお陰で被害が無くなれば、それが良いと思うし。
『あの時』はそんな状況で、私のチームからEAUを要請を通して、さらに分隊にすると判断した上で単独行動を申請して。
今回の指揮系管理システム、『3IOS』の主幹は司令の警備部や軍部の方だから、彼らにEAUが許可をもらった流れだと思う。
まあ、そこに至るまでの手続きとか、複雑で、めんどくさそうだな、と。
改めて考えると、EAU内部でも、ちょっとゴタゴタしたのかもしれない。
それでも、オペレーターのサポートは充分に機能してたから、EAUの
「なんかやったのかよ、」
って、ベンチに座ってるケイジが、下から覗くようにニヤリとしてきていた。
なんだか面白そうなことを見つけた、みたいな、まだ悪ノリのケイジっぽい。
騒がせてた当の本人の1人が・・、とミリアがジトっと半眼の横目にそのケイジの、生意気そうな顔を見てたけど。
とりあえず、口を突いて出そうな言葉を飲み込んで、閉じておいた。
その反動か、ミリアの
『まあ、後でゆっくり聞かせてもらうよ、ケイジ君』
「ん?」
アミョさんの声に、ケイジがきょとんとしてた。
やっぱり、当の本人がすっかり色々な事を忘れてそうなんだけど。
『それじゃ、以上だ。ミリア君たちもゆっくり帰って来て』
「はい、お手数かけてすいません」
『・・うん、まあ、そういうんじゃないけど。また後で。』
ちょっとなにか言いたそうなアミョさんのような気がしたけど。
「へっへっへ、」
なんだか嬉しいケイジらしいので、その・・・ニヤニヤと憎たらしさを
って、急にケイジの横からガイが、いつの間にか首へ素早く腕を回して、がっちりとロックしてた。
急に留まる
「ぉあっ、なに、すんだっ・・・?」
自由に動けなくなったケイジがびっくりしてもがいているので。
「おーしおし、」
ガイも、ニヤっとしているようなので。
・・ミリアはガイへ、右手でさっと
ケイジを黙らせたガイは、こっちを見てなかったけど。
「そのままにしといて、」
「おう、」
こっちにニヤリとするガイで。
「なんでだよ、」
ケイジが不満を言ってたけど。
そんな絞められてるケイジを横目に見てるミリアは、『よくわかってなさそうだから』、とは別に教えないけど。
がっちり決まっているようで、なんとか抜け出そうとしているケイジは苦しくは無さそうだから、ガイもちゃんと手加減しているようだ。
そんなケイジやガイとかを見ていたら。
「・・ふふ・・・っ」
ちょっとミリアは笑っていたけど。
ケイジがこっちを睨んでくるから。
「じゃ、帰ろうか、」
って。
その言葉は、首をロックされてるケイジを、目が合ったら、瞬きをちょっとしたような。
だから私は、寄り掛かっていたベンチから、ちょっと勢いをつけて離れた。
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