第30話 エピローグ

 次の日の朝、僕達は付き合い始めた宣言をした。

 本来なら、こんなことをする必要は無かったのだが、高橋の虚言のせいで疑われた僕と武田の関係をはっきりさせるために宣言することにした。

 それを聞いて高橋はまだブツブツと文句を言っていたが、すでにこのクラスには彼の話をまともに聞く者は誰一人としていなかった。

 それまではクラスのリーダー的な彼は、それまでの僕以上に誰からも相手にされない存在になってしまった。

 イジメを許さない武田の目があるため、僕がされたような積極的な物はないが、毒物を見るようにみんな、彼に近づかなくなっていた。

 そんな彼の姿を見て僕は、単純にザマーミロという気分にはなれなかった。

 暴走したとは言え、彼は彼なりの正義で動いたのだろう。その底にある下心が彼の目を曇らせたのだとしても。

 だからと言って、同情する気にもなれなかった。

 結果、僕もクラスのみんなと同じように彼に関わろうとしなかった。それは、僕からすると今回の事が起こる前の状況に戻っただけだと言えばそれだけなのだが。


 そして、黒柳は恋の魔女として活躍して、たった半年で黒柳の占いはすごく当たると校内で評判になり、その美貌と相まって、学校中で知らぬ人がいない存在になった。特に女子には大人気だった。

 そして、僕と武田は屋上で次のデートの予定を立てようとしていた。

 

「それで、今度の日曜日なんだけど、練習がオフになったから、どこか行こうよ」

「いいね。日曜日なら天気も良いみたいだし。どこに行く?」

「そうね。久しぶりに、初めてデートした動植物園なんてどう?」

「いいわね」


 暇な僕と違って、恋人同士になったからといって、陸上で忙しい彼女と頻繁にデートなど出来ない。

 電話やメールは毎日のようにやりとりをしているし、同じクラスなのだから学校に来れば会って話もする。

 それでも、デートをするということは特別なのだ。

 そう、僕達のデートは特別なのだ。


「月子にメールしたら、その日OKだって」

「良かった。つーちゃんも最近忙しそうだもんな」


 僕達のデートは三人で行く。


 誰かが言った。

 初恋は実らないものだと。

 僕達の初恋も実らなかった。

 けれども、こんな初恋の終わり方もあっても良いのではないだろうか。

 恋の魔女の初恋が――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋の魔女の初恋 三原みぱぱ @Mipapa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ