田舎の祖母宅、離れに暮らす正体不明の「美しい人」と、その彼を気にする『僕』の物語。
和ホラーのような設定が魅力の、現代もののファンタジーです。
祖母曰く「神と人との間に生まれた子」という、この世ならざる美しい何者か。
決して触れ合ってはならないとされるその彼と、しかしふとしたきっかけから親交を深めてゆく、その優しく穏やかな様子がとても心地よいお話。
同時に、その裏に感じるほのかな後ろめたさというか、〝禁忌に触れている〟という感覚も魅力のひとつ。
人ならざる存在への畏れと、厳命されたことを破っているという背徳感が、何かよくない行く末を想像させてくれるところがとても好き。
一番好きなのはやっぱり結末、この物語の最終的な帰着点そのもの。
静かで柔らかく、なのにうっすら怖さのようなものが漂う、とても素敵な物語でした。