第98話

「んっ、ふぁ~。おはようございます。ってもう夕方ですか!?」


「ああ、おはようさん。よく眠れたか?」


「はい、とても」


「そうか、それは良かった。で、準備は終わったのか?」


「はい、終わりました。これから、NOEsの拠点に向かいます」


それから数時間後、船は目的地に着いた。俺は目の前に広がる光景に唖然とした。

そこにあったのは、大きな建物。島一帯を丸々建物に建て直したような巨大建築物。


「嘘だろ?こんな馬鹿でかい建物作っといて、環境保護唱えてんのか!?」


「はい、そうですよ。ここはNOEsの本拠地であり、各国が多額の献金をしています!」


そう言うとアンナは建物の中に入っていく。俺も後に続く。そこは、研究所と言うよりは、一つの街だ。建物の中に建物が並び、人々は行き交っている。大小さまざまな水槽が並び、管理されている。


「凄いな。まるで国だ」


「はい、このNOEsは海洋保全を名目に各国の難民を保護し、様々な実験を行っています。そして彼らは、海洋技術で発展して、街になっているのです!」


「成程な、確かにこれなら資金源には困らないだろうな。だが、何故ここまでする必要がある?」


「さあ?わたくしNOEsとは全く関わりないので、存じ上げておりません」


「そうか……」


◆◆◆◆


「ようこそ、NOEsへ」


受付のような所で、俺たちは挨拶される。


「こんにちは、わたくしアンナ・リリエンクローンと申します。『温暖化によるマグロ魚群の回遊路の偏移』について研究しております。今日はこちらで研究の為の採集の許可を頂きたく参りました」


「ほう、『地球温暖化』か。君みたいな子供が環境問題に関心があるとは感心だね。71エリア-D3ブロックに専門家がいる。彼に聞くといい」


「ありがとうございます」


「じゃ、頑張ってね」


そう言って、男は去って行く。


「案外ちょろいもんですね。攻撃されませんでしたよ!!それでは、エレベーターに乗って、進みましょう!」


巨大建造物の中を見渡して分かったが、大量の固定砲台タレットが至る所にに設置してある。恐らく、襲ってくる奴らはあれで撃退するつもりなんだろうな。だが、俺の敵じゃない。


「海洋技術って売れんのか?」


「あまり大きな声で言えませんが、市場規模はデカいですわね。純粋な石油やレアメタルが眠っているので、面倒くさい再利用リサイクルをしたくない企業はこぞって穴場を作ろうとしていますの!」


白い壁が続いて頭がおかしくなり始めたら、ちょうどアンナが止まる。


「着きました!ここが、研究室ですわ!!」


「失礼します!」


扉を開けると、そこには白衣を着た老人が立っていた。

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