第85話
小鳥が鳴く音で起きる。カーテンを開けると、朝日が差し込んでくる。今日も良い天気だな。ここは喫茶『白の輪』の二階。顔を洗い、歯を磨いて、服を着替え、一階に降りる。すると、調理場の方でトントンと包丁の音が鳴る。ああ、今日はマスターが朝食を作ってくれているのか。マスターの料理は絶品なので楽しみである。階段を下ると、コーヒーの良い匂いが鼻腔を刺激する。
カウンター席に座り、市域新聞を読む。一面には昨日の俺の写真が載っていた。ふむ、なかなか格好よく撮れているじゃないか。記事の内容は、俺が盆栽大会で特別賞を取ったことについてだ。ふむふむ。
「おはようございます」「おお、ロイ君か。おはよう」
挨拶を交わすと、マスターがモーニングセットを出してくれた。町で取れた小麦を使ったトースト。畑で取れた新鮮な野菜のサラダ。培養肉を薄めに切り品種改良された鶏の朝取り卵を使ったベーコンエッグ。コンソメスープは自家製だ。どれもこれも美味しい。
「クロエさんはまだ起きてきてないのかい?」
「ええ、まだ部屋で眠っています」
「どうしたんですかね」
「昨日忙しかったから疲れてるのかもしれない。久々に
マスターはそう言って、調理場に戻っていった。俺も今日は仕事をするか。今日も頑張ろう!扉を開け、ファントムに乗り込み、ドームに向かう。
◆◆◆◆
ドームに着くと、駐車場に装甲車が止まっている。あれは……
「マオじゃないか」
元傭兵のマオ。彼がここにいるということは……
「おう、ロイ!久しぶり!」
やっぱり、マオは元気そうだ。
「どうしたんだ?こんなところで」
「いやー、実はよぉ……」
彼は照れたように頭を掻いている。
「俺もここで働くことになったんだよ。そう、雇われ助手だ!」
「おー!それは良かったな!これからよろしく!」
「おう!お前も頑張ってくれよ!」
こうして、俺のラボに正式に新たな仲間が加わった。やったぜ。
「お前、どこに住んでるの?」
「ああ、市長さんに改築されたアパートを紹介してもらってな。アンナとお隣さんだぜ」
「へえ、良いじゃん」
そんな会話をしながら、俺達はラボに向かって歩いていた。
「あっ、そうだ。雫ちゃんとはどこまで進んだの?」
ニヤリと笑いながら、マオが聞いてきた。
「ん~……まあまあかな」
そう答えながら、俺は内心焦っていた。何故それを知っている。
「お前が居ない間に色々あったんだけどよ」
ラボの自動ドアが開く。
「コケモモ事業は、順調に進んでるぞ。第四世代以降はマタギの里周辺の養鶏場を増設して、そこで繫殖を進めている」
「成程。取り敢えず、第三世代のコケモモは研究室で育てる方針だから大丈夫かな」
「ああ、問題ないな。それにしても、ここの地下二階のシェルター使わないのか?地下一階の培養槽も処理してないし、勿体無いと思うんだが」
「面倒くさいから後回しにしてる」
下らない話をしていると、市長から
「例の物が届いた。至急引き取ってくれ」
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