第79話

「誰だッ!!!」


 ドアを蹴り、隠しておいたナイフを取り出す。


 黒づくめの男、忍者だろうか。すぐさま突進してくる。俺は身体を逸らすことで避ける。そのまま相手の腕を掴み、関節を決める。相手から武器を奪う。銃か。だが、コイツ一人じゃないはずだ。俺は廊下に出て走り出す。


 後ろからは、足音が聞こえる。やはり、一人じゃない。このままでは追いつかれる。


 非常階段に出る。下には降りられない。ならば上か。俺は思いっきりジャンプし、手すりの上に乗る。これを繰り返し、屋上まで登る。追手が見えた。人数は5人。俺と同じぐらいの年齢の若者だ。屋上のドアを蹴破り、広い空間に出る。既に日は暮れ夜。


 ヘリポートと電波柱。京都タワーの屋上。


 数秒程度の間を開けて、忍者たちがドアから出てくる。彼らは俺の存在を確認すると、すぐに攻撃してきた。

 

 飛び道具による攻撃、恐らく苦無。ナイフで弾く。そして、間合いを詰め、一気に斬りかかる。


 一人の腹を斬った。血が出る。他の4人が、一斉に攻撃してこようとする。俺は、4人の攻撃を難なくかわす。俺は、一番近いやつの頭を思い切り蹴る。頭蓋骨が割れる感触が伝わった。残りの3人は怯んでいる。


 忍者らがこちらに掌を翳す。


「!」


 ……殺気を感じ思いっきり身体を捻じる。熱線が胴を掠める。ここは武装禁止区域だぞ?後ろに下がりながら、敵の様子を伺う。


 あの忍術ぶそうはなんだ?明らかに殺しに来ていた。まさか? いや、まだ確信は無いはず。それに、今ここで暴れたら大会に出られなくなる。それは避けたい。逃げるかにしても、この場から離れるわけにはいかない。


 すると網膜にメッセージが来る。


『ちょっと避けろ』

 

咄嗟にしゃがむ。暴風。忍者が吹き飛ばされる。


「おう、元気にしてっか?」

「助かりました、天狗殿」


 助かった。流石の英雄だ。


「それじゃあ忍者ども、大人しくお縄につけ」


蹂躙が始まった。天狗の前では苦無など暴風により無力化され、近接格闘すら圧倒的。5分程度で若い忍者たちは屋上から落とされた。


「……やりすぎじゃないですか?」

「忍者になったんだ。死ぬ覚悟は出来てるだろう」


 階段を降り、自分の部屋まで戻る。


 何だかやるせない気持ちで部屋に戻ると関節技をキメた男は居なくなっていた。俺のアタッシュケースも無くなっていた。あいつが持っていったんだろう。明日また襲ってくるに違いない。まあ、その時は返り討ちにしてやる。


「鍵はちゃんと閉めろよ」


 忠告を受けベッドに入るが、勿論眠れない。何か強大な力が動いている上、敵地で熟睡できるほど、俺はタフな人間じゃない。時計を見る。23時30分。まだまだ起きていられる時間だ。vuに潜るか。

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