第78話
100人のグループで初戦は戦う。そこで勝ち上がり、次のステージに進む。
部屋に荷物を置いた後、大規模の部屋に集められる。開会式が始まるらしい。
「皆さん、ようこそお越しくださいました。私は大会委員長の……」
長い挨拶が続く。こういうのは得意じゃないから、寝そうになってしまう。
「では、最後に……今回の特別賞では、トロフィーの他に副賞として……」
その言葉を聞いて、一気に目が覚める。
「なんと、あの遺物【霊式隔離封印棺】が副賞として与えられます」
一瞬、騒めきが広がる。その後、大きな拍手に包まれた。
おいおい!! 最高の睡眠が出来るじゃないか。元社畜として、睡眠は命の次に大切なんだ。
「続きまして、今大会のルール説明を……」
◆◆◆◆
最初のお題が発表された。盆栽に使う樹を選ぶのだ。それぞれ5つの種類から一つを選び、それを盆栽にする。最終的にその合計点が高い上位3名が決勝に進める。サクサクと進む。
「俺の番だ」
俺は、【松】を選んだ。枝がしっかりとしていて、幹が太い。とても育てやすそうだ。盆栽を育てるにあたって、まず初めにすることは土選びだ。俺の選んだ【松】の盆栽に適した土は、赤玉土(小粒)と呼ばれるものだ。初心者でも比較的簡単に育てることができる。
「ふぅー」
集中して、盆栽を作る。まるで、昔に戻ったような感覚に陥る。
「なかなかやるね」
後ろを振り向くと、一人の少女がいた。彼女は俺を睨みつける。
「何ですか?俺はただ盆栽を作っているだけですが」
「そんなことは知っているわよ。アンタはどうせ予選敗退でしょうけど」
「どうでしょうか」
俺は微笑む。
「ふんっ」
いけ好かない奴に話掛けられたが、続きだ。次にやることは、水やりだ。盆栽にとって水はとても重要だ。適度な湿度を保ってやる必要がある。水の量と、霧吹きを上手く使えば、綺麗な盆栽を作ることができて、植物の成長を促すことが出来る。
現代の盆栽は高速で成長する植物を手なずける、という高難易度の技術が要求される。しかし、この【松】はそこまで成長が早くないから大丈夫だろう。
俺は、霧吹きで水を撒く。この作業は案外楽しい。
次は、剪定。これは盆栽の見た目を整える作業だ。これも、俺の好みで切っていこう。
そして、最後に肥料を与える。盆栽は、土の中に栄養を蓄える性質がある。だから、定期的に肥料を与えてやらないといけない。
全ての工程が終わり、完成した盆栽はそれはもう素晴らしいものだった。自分でも惚れてしまうほどだ。これなら、誰にも負ける気がしない。
◆◆◆◆
予選一日目が終わった。どうやら、俺は決勝まで残れたようだ。
「あら、貴方も予選突破したのね。まぐれだろうけど」
こいつは、ずっと絡んでくるな。まぁ、相手にする必要はないか。さて、明日に備えて休むか。階段を上がり、自分の部屋の前に立つ。あれ……部屋のドアが開いている。誰かいるのか?中に入ると、男が居た。
「誰だッ!!!」
ドアを蹴り、隠しておいたナイフを取り出す。
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