第71話
京都、古い寺の庭にて──
「シゲの野郎、
げっ、と剣を片手に大柄な男は言葉を発する。
男は赤く鼻の長い天狗の様な面を被り、修行僧の様な法被を着ている。
小石の庭には黒ずくめの男達が絶命している。
「にしても、最近、きな臭ぇんだよな」
天狗はそう言って、この間から大戦時代の英雄が狙われてる件について考える。
「ミスったな。脳死で皆殺しにしたから聞き出すの忘れちまった」
そう言って胴体が上下に別れている死体をみる。
「おやおやおや、
「何だァ、テメェ」
「やはり、借り物の兵士は使えませんねェ」
声のしたほうを見ると長身の男が立っていた。武装は巨大な鉄製の百足、そう四井重工の
「天狗殿、大人しく死んでは頂けないでしょうか?」
「丁重にお断りさせてもらう。大戦で折角拾った命なんだ、他を当たってくれ」
「残念、ですッ!!!!」
高速の
天狗は余裕綽々と避ける。
「面倒臭ぇなァ!!」
後ろに飛んだ先には百足。鋭い鉄の顎を打ち鳴らし構えていた。
百足の突進を避ける。百足の足は全て短剣と等しい。
「じゃあ、取り敢えず……殺すか」
天狗の気が爆発的に上昇、
「噴ッッッ!!」
自分の放ったソレとは速さも重さも鋭さも上回る刀による突き。咄嗟の判断で百足を盾にする。
デチンという鋼が無理やり捩じ切られるような音と共に、百足は貫通され、目の前に剣先が迫る。
「チッ……殺り損ねたか…」
(
長身の男は、直ぐ様に肉体を加速させ、天狗の後ろを取る。
(貰ったァ!!)
完全な勝利。隙の首元を狙った突きが、刺さるッッッ……
「
遺物、大戦時代に開発された所謂オーパーツ。それは政府が極秘に開発していた特異技術産物である。大戦で、各国が総力を挙げて開発した武器兵器は数多くある。しかし、極小数、それらは現代において再現はほぼ不可能と言われているものがある。
例えば、超小型重力発生装置。或いは異空間への干渉技術。超人血清から巨大戦艦まで形は様々だ。
それこそが【遺物】と呼ばれるものだ。
遺物は二種類存在している。一つは開発・研究が禁止されたもの。もう一つは何らかの影響により、失われた技術だ。
「去ね」
天狗が持っているのは、前者。大戦初期に発明された真空層状乱刃Ⅱ型。
開発計画名「吐息喰らい」
それは不可視の刃。見えない、聞こえない、感じられない。
斬撃は、風を切る音すら残さない。
それが例え音速を超えようとも。
「……」
無言で、その天狗は佇む。長身の男の肉体は思い出した様に出血する。
男はドサリと倒れる。血が地面に吸い込まれていく。
「はぁ、どうすっかな……この死体」
天狗は石畳みに座り込む。
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