第63話
戦車が街道からドームに砲撃する。超硬質コンクリート製の防壁の為、電磁加速砲による破壊を試みた。これから隊列を組み、制圧と内部からの破壊を行う。
「というか田舎にこんな巨大な施設って何やってるんでしょうね」
一人の隊員が気楽そうに話す。
「それは私にも分からん。だが生物改造を行っているらしい」
隊長は答えた。
「そもそも、この施設は一体誰が作ったんだ?」
「知らんよ」
「そういえば、ロイ博士でしたっけ?どこに行ったんスか?」
アルファチームの軽薄そうな隊員の一人が言う。
突如、先頭車両から連絡が入る。
『こちら3号車。前方に人影あり』
「了解。無視しろ。」
車列は進む。すると、前方の車両が爆発し、炎上する。
「くそっ!!何があった!!」
「分かりません!突然、車両が吹き飛んだんです!!」
「全員、降車しろ。状況を確認する!!」
車内から降りて、辺りを見回すとそこには一人の男が立っていた。一本の刀を差した、義体侍。シゲだ。
「あんたは……」
男は答える。
「初めてだなあ。こんな片田舎のド辺境に、物騒な武器なんて持ってくるなんて……どういう了見だい?お兄さん方」
「貴様は誰だ」
一斉に銃を構える。
「人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗れよな」
「我々は、民間軍事会社PSSだ。我々に攻撃したこと、後悔させてやる」
「へぇー、民間ねぇ……。お前らみたいなのがいるから、世の中平和にならないんだよ」
シゲが笑う。
「何を言っているのか理解できないな。……おい!」
部下がシゲに向けて発砲。銃弾は正確に目標を捉えていた。しかし、弾丸はシゲに当たる寸前、神速の抜刀術によって真っ二つに裂かれた。
その光景を見て、動揺する者はいない。訓練された動きで全員がシゲに銃撃を浴びせる。
***
シゲは避けない。全て、身体に着弾するがダメージはない。
全ての攻撃を完璧にいなす。そして、次の瞬間には敵の首が飛ぶ。血飛沫を撒き散らしながら、死体が倒れる。シゲはゆっくりと刀の血を払う。
その時、後ろから別の部隊が襲いかかった。仲間の死体を盾にして、至近距離からの銃撃。
シゲは刀を水平に構えると、そのまま縦に振り下ろした。それだけで、無数の銃弾は全て切り裂かれ、地に落ちる。
一瞬の出来事だった。目の前の化け物はたった一人で戦況をひっくり返してしまったのだ。
隊員たちは震え上がる。しかし、一人だけ例外がいた。
アルファチーム隊長。通称、鬼軍曹。この男だけは恐怖を感じていなかった。むしろ歓喜していた。彼は戦うことしか能のない戦闘狂だったからだ。
彼もまた、銃を構え、撃つ。シゲはその弾丸を事も無げに斬り捨てた。
シゲは無造作に距離を詰める。
鬼軍曹は冷静に、引き金を引く。彼の撃った9mm弾はシゲの顔面に直撃。
普通の人間なら即死しているはずだった。だが、この男の脳は異常なまでに強化されていた。
頭部に穴を開けながら、それでもなおシゲは前進する。
肉塊のような顔から赤い眼光が覗く。恐怖を押し殺し、鬼軍曹は更に撃ち続ける。
やがて、銃弾が切れる。
シゲが刀を振り上げる。
鬼軍曹はそれを、ナイフで受け止める。だが、その勢いまでは殺せない。後方へ弾き飛ばされる。
地面の上を転がりながらも、なんとか立ち上がる。
ふと、視界の端に映る。そこには、怯えて動かなくなった部下の姿があった。
隊長は、舌打ちをする。そして、覚悟を決めた。
***
新人の俺、マオ・ユーランは車影に隠れ、歯をガタガタ言わせて怯えていた。
今までの経験がフラッシュバックする。
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