第62話
青空の下。軍用回転翼機が海上を飛ぶ。
『日本領海領域、ステルスシステム作動』
民間軍事会社PSSの初の国外任務。俺らは違法合法問わず、実入りの良い仕事は何でもやるグレーな企業だ。今回の依頼内容は、日本のとある田舎町の施設の破壊工作である。イカれた原生至上主義の過激派の依頼だ。
『目標まで残り2時間』
「おい、そろそろ準備しろ」
チームのリーダー格の男が言う。
「あいよリーダー」
俺はそう答え、装備の確認をする。全てランク4以上の装備。
「よし、全員いるか?」
「問題ない。アルファチーム、ベータチーム、チャーリーチームは?」
「オールクリア」「こちらもだ」
『こちらベータチーム、いつでも行けるぜ』
『了解、作戦開始時刻は予定通り。各自所定の位置へ』
二機のヘリが山の森林の上空に待機する。そこから一気に降下する。
「よし、行くぞ」
「「おう!!」」
ターゲットの施設は、森への入口にある。警備は手薄だ。まずは施設の周囲を偵察しに行く。
「どうだ?何か見えるか?」
双眼鏡を渡しながら聞く。
「んー、何も見えないッスね」
「こっちも同じだな」
「そうか……なら、とりあえず正面から入るしかないか」
「えぇ!?マジっすか?」
「仕方ないだろう」
***
ドームの中の芝生の上で、投げられる。受け身を取る。
「はい、次!」
「はいっ!!」
「ほれっ!」
「くぅ……ッ!!」
「ほら、もっと腰入れて!」
「ふぬっ!ぐぎぃ~ッ!!!」
「ほらほら、あと10回だよ!」
俺は今、シゲさんと二人で腕立て伏せをしている。なぜこんなことをしているのかと言うと……。
昨日、護身術を教えて貰うことを約束したからだ。そして今日早速教えてもらうことになったのだが、その前に体力作りから始めると言われたのだ。義体で補えるのに何で筋トレをしなきゃいけないんだろうと思ったが、シゲさんの気迫に押されてしまった。
ちなみに、シゲさんは120%人工義体だ。
「よし終わったらこの特性プロテインを飲め」
そう言って渡されたのは紫色をした液体の入った瓶だった。嫌な予感がするがきっと気のせいだろう。ラベルを剥がし一気に飲む。
「マッズ……」
舌が痺れるような感覚。吐き気が込み上げてくる。
「濃縮藻類と超高栄養価の植物を混ぜ合わせたものだ」
シゲさんが説明する。
「これ、本当に必要なんですかね?」
「ああ、必要だ」
絶対嘘だ、と思いつつも黙って飲み干す。
「さあ、次は腹筋だ」
「うええ、まだやるんですか?」
「当然だ。これもトレーニングの一環だからな」
「はい、分かりました……」
そうして、俺はシゲさんとひたすら筋トレを続けるのであった。
「よーし、じゃあ護身術を教えるぞ」
「よろしくお願いします」
「まあ、護身術と言っても基本は逃げることだな。相手と距離を取って逃げるんだよ」
「なるほど……」
「まあ、お前さんみたいに強化人間なら話は別だけどな」
「でも、そんなに簡単に逃げられますかね?」
俺は疑問を口にした。
「そうだなぁ……例えば────」
爆発。衝撃。厚みのある金属扉を貫いて、熱を帯びた衝撃波が身体を叩く。
一瞬遅れて、鼓膜を突き破らんばかりの轟音。耳鳴り。
「────」
声にならない悲鳴。痛み。全身を襲う激痛。視界が赤く染まる。
「……ッ!!?」
飛び起きる。心臓が激しく脈打つ。呼吸が荒い。
「大丈夫か」
シゲさんが俺の顔を覗き込む。
「何者かに襲撃を受けている」
シゲさんは冷静だ。
「敵は?」
「分からない。……が、かなり強力な兵器を持っているようだ」
「どうすればいいですか?このままだと殺さるんじゃ」
「そうだなぁ、とりあえず隠れよう」
「どこにです?」
「地下だ」
「地下に?なんでまた」
「シェルターがあるからだ」
シゲさんに連れられて、施設の地下へと降りる。そこには大きな空洞が広がっていた。
「ここは何のための場所ですか?」
「詳しくは後で話す。緊急避難用のシェルターだ。ここなら安全だ」
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