第57話
「昨日は素っ気ない態度とってしまいました。すみません」
クロエさんに謝る。
「いいのよ。私も悪かったから」
お互いに謝罪する。これで一件落着。
「今日は喫茶店は休みにして、一緒にゲームでもしませんか?」
クロエさんが提案してくる。僕は二つ返事で了承する。
「分かりました。タイトルは何しましょうか」
「そうですね。じゃあ『Valhalla』にしましょうか」
お互い自室に戻り、ダイブする。
Valhalla。チュートリアル、半自動操作、レベル、インベントリー、ファストトラベル、非戦闘エリア、全部無しの世紀末戦闘VRゲーム。そのコアなユーザー層は電脳廃人と一部のガチ勢のみ。
Valhallaには大きく分けて3つの国がある。
1つ目は、機械国家。
2つ目が、人間国家。
3つめが、亜人国家。
それぞれの国が戦争をしており、プレイヤーは傭兵となって戦う。このゲームは自由度が高く、自由でない、という矛盾したゲームであり、プレイヤー達は自分の思い描く理想郷を求めて戦場を駆ける。ちなみに、このゲームの難易度はかなり高い。しかし、それ故にやりがいがあり、面白いと評判である。
***
酒場で待っていると、一人の男に話しかけられる。
「おお、久しぶりだな。ロイ」
「リョーマさん、お久しぶりです」
亜人国家のトップランカー、世界ランキング34位、リョーマ。大盾使いのタンク職でありながら、攻撃スキルも豊富に持っている。彼は、このゲームの世界大会でベスト8まで上り詰めた実力者でもある。
「今日は何か探しに来たのか?」
「いえ、友人と遊ぼうかと、そう思って来ました。」
「そうなのか?なら、うちのクランに入らないか?メンバー募集中だぞ。どうだい?」
「えっと……」
「大丈夫だよ。別に強制はしないさ。ただ、俺の知り合いには強い奴が多い。お前も強くなれるかもしれないぜ」
「まあ、また今度ということで」
「しゃあないな、気が向いたらいつでもこいよ」
「では、失礼します」
「ああ、気をつけて帰れよ」
そう言って、別れを告げる。ちょうどクロエさんも用意が整ったようだ。しかし酒場の外が騒がしい。外に出てみると、大勢の人が押し寄せていた。そして、その中心にいる人物を見て驚く。
そこにいたのは、クロエさんだった。彼女はメイド服に刀を一本腰に帯刀した状態で群衆の前に立っていた。
おいおい、あのスキンは世界ランキング17位の〈メイド侍〉じゃないか。
この電脳世界において、彼女の知名度は高い。
まず、彼女の戦闘スタイルだが、基本的に相手の攻撃をいなしてカウンターを決める。そして、隙あらば一撃必殺の攻撃を叩き込む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます