第50話

「初めまして!私、ラスベガスから来ましたアンナ・リリエンクローンと申します」


 勢いよく少女が頭を下げる。ロイが勢いに押されポカンとしていると。


「ほら!油淋鶏を頼んだ、わたくしですわ!!」


「ああ!!思い出した。引っ越してきたんですね」


 ロイは思い出した。ビールも飲んでいたあの少女だ。


「ええ、今後、町おこしとして料理コンテストに参加すべく、キメラの調理法を研究しに引っ越して来ましたわ!」


「それでうちの農場に」


「はい、お願いできませんか!!!私、なんでもお手伝いしますわ!!」


 アンナはロイを見つめると、目を大きく見開く。ロイが驚く程顔が近い。


「わ、わかりました。では真米の遺伝子組み換えに付き合ってください」


 そう言うとロイはアンナをラボに上げる。


 ***


 ラボには様々な機材がある。まずはDNA解析の装置。この装置は特定のDNA配列がどのような生物の特徴を遺伝するかを調べる事ができる。これによりキメラの研究ができる。


 次に、真米のサンプルが入っているフラスコ型の容器。これは特殊な液体が入っており、特定の細胞だけを活性化させる作用を持つ。これによって効率良く品種改良ができる。


 ロイは薬の包装シートのようなプラスチック製のものを取り出す。


「それでは、まず栽培しておいた準米の遺伝子を書きかえます。このセルに一粒づつ入れましょう。だいたい千粒ほど。一つ一つ丁寧に遺伝子組み換えしていきます。この装置が自動で仕分けるので、この傾斜になっているところにバーっと入れてください」


 するとアンナが手を上げる。ロイは少し驚いたが質問を受け付ける。


「わかりませんわ。その……準米というのはなんでしょうか?」


「あー、すみません説明不足でしたね。えっと、ご飯ライスのことです。普通の米が一年で育つのに対し、この準米と呼ばれる品種は3ヶ月で成長できるんですよ。それに病気や虫にも強いんですね。」


「なるほどですわ……」


「あと、真米って知ってますか?」


「あ、それなら。伝説のお米の事ですわね。わたくしこれでも料理研究家を名乗っておりますのでわかりますわ!」


「ええ、あれも元々はこの種だったらしいです。」


「まあ!!では私たちがこれから作るキメラはそんな伝説級の食材が作れるという事ですわね!!」


「ええ、そうです。だから気合いを入れて下さいね!」


「はい!!!」


 そう言うと二人は機械の前に座る。ロイは作業をしながら、会話を続ける。


「ラスベガスって言うと上流階級のお嬢様だよね。日本語もお嬢様言葉使っているし、こんな土いじりして大丈夫なんですか?」


「心配いりませんわ。私は貴方のキメラ飯に感銘を受けてここに来ましたの。ですからこれは食を楽しむための投資の様なものです」


「なるほど。それは恐縮です」






◆◆◆◆

今日の受検頑張ります

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