第45話

 vuからログアウトして自室に戻る。

 市長と通話を繋ぎ先程までの経緯を説明する。


『それで、草薙の次期社長とコネ作ったのか』


「そういう事ですね」


『では日本種子保存協会に入れるのか?』


「設計図を貰ったんですけど、あそこは物理的防御が強いので無理って事がわかりました。」


『うーーーーん。それじゃデータを無駄に渡しただけじゃないか』


「いやでも、有益な情報もゲットしましたよ。それが大図書館ライブラリにある真米のデータです」



 2100年以降、世界の情報量は爆発的に増えた。あらゆる情報はデジタル化され、世界中の端末で閲覧できるようになった。


 現在では古い情報から最新の情報まで数京TBテラバイトもの情報がある。無限に膨れ上がった情報による混乱が起こるのはすぐだった。情報を管理する企業や組織が乱立、中には情報の独占を狙って他の企業を襲撃したり、テロ行為を行う集団もいた。


 そんな情報の海で埋もれている情報を検索及び一括管理する為に開発されたのが大図書館ライブラリである。そこには膨大な量の情報が保管されている。ただし、閲覧できる物はごく一部であり、普通の人間は入れない。


 情報の書き換えは不可能であり情報の同一性が担保されている。殆どの情報が正確であるか精査され、正しい情報は保護される。勿論フェイクニュースもフェイクだとわかる状態で保存されている。大図書館には、真米の製造方法、農業革命の内容、世界大戦の詳細、世界の地理、政治経済、様々な分野についてのデータがある。


 vuを始めた遺物オーパーツに関しては特別に閲覧制限されており、情報を得る為には特別な許可が必要である。そのためvuの裏で憶測と断片的な情報から考察するしか手はないのだ。



『だが政府によって秘匿されているんじゃないか』


「それが話によると、実は財閥の人間が情報を確認できるように他の遺物よりシステムが弱いんですよね。要するにセキュリティーホールですよ」


『なるほど。それを破る事が出来れば入手できるのか』


「そういう事になりますね。ですが攻性防壁が脆いとは言え、軍用クラスの硬さですよ。それなので凄腕のハッカーが必須ですよ」



『はぁ~。また一からやり直しか……仕方ない。お前の言う通り人材を集めておくよ。それにしても良くそこまで調べられたな。まさか先にハッキングしてないだろうな』


「してません!まあ草薙さんがくれた資料を読んだだけです」


『そうか。数日待ってくれ』


「わかりました」


 通話が切れる。ハッカーか、誰が来るのだろうか。市長ほどの人脈を持っていれば使い捨てするような程度の低いハッカーは用意しないだろう。そこは安心している。


「さて、今日は農地を少し弄るか」


 何て独り言を言った後、水筒の水を一口のみ、喉を潤す。

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