第43話

 vu内のひしめくビル群。その中の一角に聳える一つの中に入る、今日はここでパーティーが開かれる


「お客様。招待状を」


 警備に順番に止められる。市長が何処からか招待状を貰ってきてくれたのでそれを渡す。するとあっさりと入ることができた。あるじゃねえかよコネ。


 沢山のセレブリティ。豪華なドレスと華美な装飾。


 俺は電脳世界の生活まで見た目に拘ろうという人間の気が知れない。普段から俺は初期アバターだぞ??そんなことを考えているうちに司会者が現れパーティーが進行する。俺は壁の花を決め込み、会場の隅っこで料理を食べる。


 料理を食べ終わると会場にいる全員に向けて挨拶が行われた。司会が喋り始めると、皆口々に話すのをやめ、話を聞く体制になる。そして一拍おいて、喋り出す。


「ようこそ……パーティーへ。まずはこの度はご足労頂き誠にありがとうございます。それでは皆さん、今日のお食事は如何でしたでしょうか。楽しんでいただけたら幸いです」


「さて、本日お集まりいただきましたのは他でもありません。我が社、草薙武装商社の最新モデルの義手の発表を祝ってのパーティになります。是非とも御覧になっていってください」


「では、早速始めましょう。まずはこちらを」


 そう言って、ステージの上には巨大な機械の腕が現れる。


「こちらは、草薙製、超大型パワードスーツ、通称『機人』の試作品です。」


 会場からは拍手が起きる。


「こちらの機体は現在試作段階ですが、近日量産を開始する予定となっております。今回発表されたのは試作機の為、一部仕様が違いますが、基本性能は同等のものとなります。」


 その後しばらく司会が話を続け、終わりに近づいていく。


「以上で発表を終わらせていただきます」


 盛大な拍手が鳴り響く。発表の終わりと同時にパーティーが再開される。ロイは会場を見回す。様々なアバターいる。猫のような耳を生やしたもの、犬の顔を持つもの、爬虫類のようなものもの、中には三頭身のキャラクターまでいる。俺は会場の片隅へと移動し、そこで料理を食べると声を掛けられる。


「あ、やっぱり。ロイっちじゃん」


 この気の抜ける呼び方をするのは一人しかいない。振り返る。黒いパーティードレスに身を包んだ赤髪の女性がそこに立っていた。エミリだ。


「どうも、エミリさん。こんな所で会うなんて奇遇ですね」


「そうだね。アタシは仕事で来たんだけど、ロイっちは?」


「僕は市長から頼まれて、ここでコネクションを作るように言われました」


「ふーん、そうなんだ。あ、ねえねぇロイっち、今日終わったら久々にアタシと勝負しない?勝った方が相手の言うことを何でも聞くっていうのはどうかな」


「えっ、嫌ですよ。面倒くさい」


「そんなこと言わずにさぁ。良いでしょ?一回だけ!ね!」


「……はあ、分かりましたよ。一度だけですからね」


「エミリさん、こちらの方は?」


 中世貴族風の華やかで落ち着いた色彩のドレスを纏った少女が話し掛けてくる。


「ああ、ゴメンね。紹介するわ。こいつはアタシの友達のロイ。例の喫茶店の常連だよ。」


「初めまして、ロイと言います」


「あらあら、ご丁寧に。私はマーガレットと呼んでください。ロイさんはどうしてこちらのパーティーに?」


「それが、何と言いますかコネクション作りをしろと言われまして」


「まあ、それは大変ですね」


 どこの企業のお嬢様か分からないが、エミリを雇えるのだから上澄みだろう。そうだコネクション。


「あ、もし宜しかったら一緒にお食事でもいかがですか?」


「え?いえ、結構です……」


2秒でフラれた。おい俺の「女性を惚れさせるテクニック300選」!!仕事しろよ!!


「もう、マーちゃん!」


「……それでは名刺だけなら」


 データが送られる。名前、連絡先が書かれていた。


「それじゃ、また今度会おうね。」


 二人は何処かへ行ってしまった。



 ***


「おい、坊主。こっち来い」


 暫く料理を楽しんでいると、髭面の中年男性に呼ばれる。


「お前さん、見ない顔だな。誰の紹介でここに来た?」


おっとーー?また厄介ごとかな??

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