第38話

「30日ッッ!!達成したぞ!!」


 サバイバル生活は酷く難易度の高いものだった。

 

 水を未処理で飲めば腹を壊し脱水症状を起こし死ぬ。


 魚を生で食べれば寄生虫で死ぬ。


 野鳥を捕まえようとすると簡単に逃げられる。

 

 ココナツは台風接近イベントで保存が効かなくなるし、キノコは見分けがつかない。


 食べたら幻覚を始めとする各症状が起こり最終的には死ぬ。


 10回は死んでいる。


 成功した回を見てみよう。

(尺の都合上ダイジェストでお送りいたします)


***


 砂浜からスタートする。


 開幕は良い感じのシェルターを見つけることだ。7回目あたりから湿度と温度が最適な洞窟を見つけたので、その辺りが生活圏の中心となる。


 序盤はココナツと漂流物集めから始まる。初日のココナツは先行きを不安にする味だった。

 しかし今回は運のいい事に葛が島の各所にあるので、非常食として用意しておいた。


 台風接近の時はそばにある洞窟に隠れやり過ごした。葛の茎の中身をチビチビ食べるのは苦痛だ。


 火を起こすのは大変だが、死ぬ気で生きれば、乾燥してる有機物があれば簡単に着火出来るようになる。これは慣れた。


 普通遭難しても、人工衛星とドローンにより3日以内に助けが来るのだが30日間生存しろというのは正直馬鹿げているとは思う。


 お陰で、典型的な群島なら生き延びられると確信している。


 俺はvuにログイン出来るようにチップは埋め込んであるが、それ以外は非義体化ナチュラルだ。この点は良かったなと実感した。


 肉体を拡張する為の技術は日々発展し続けており、この世界の大半の人間は義体化手術を受けている。義体化した場合、電源は生体電位によって動く。


 基本的に充電が必要である。これは、非接触充電器により解決している。椅子を始めとする世界の至る所が充電器と一体化しているのだ。


 しかし、逆を返せば裸で遭難した際、速やかに充電手段を確保できなくなった場合、臓器が動かなくなって死ぬ。


 人工衛星による世界中の監視が一般的な今、遭難というケースなんて無いのだが、馬鹿なロイは真面目に生存訓練を受けている。

  

 こと遺伝子学に関しては天才であるが、それ以外に関しては意外にも馬鹿である。


「よし!!終わったぞ。八尾!!!出てこい!!」


 ロイが叫ぶと、何処からか女が現れる。


「なんじゃ騒々しい。おお、生き残れたのか。なかなかやるではないか」


「いやいや何回も死ねば誰でもこれくらいできますよ」


「ほう。では、次の課題は……」


「うるせえ!!!」


 完璧な美貌の女を捕まえ、ヘッドロックする。


「イデデデデ!!!離すのじゃ!!」


「まだやるんですか?」


 ロイは疲れ切った表情を見せる。


「当然じゃ!!!ほれ次行くぞ」


「ちょっと待ってください。もう限界です」


「そうか、仕方ない。じゃあ次は言語の勉強と、戦闘訓練な」


 八尾による題して「最高のお婿さんになろう計画!!」は始まったばかりである。


 この女!!泣かせたるわ!!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る