第37話

 無限に広がる海洋色。


 そして上空3000メートルからパラシュートなしの自由落下。


「あーーー!!!!!!!」


 生物的本能に従い大声で叫びながら落ちる。


 下には島、南国の島々という表現がピッタリだろう。


 落下、落下、落下。砂浜に全身がぶつかり、シミになろうかという瞬間、物理学に反するように落下が止まる。地面との距離は残り10センチ。


 ふぅ〜と溜息を吐く。


 すると糸が切れたように再度落下し全身に砂が付く。


「痛て」


 砂まみれになった全身をパンパンと払う。当たりを見渡せば、一面の海。森林。砂浜。


「ここどこだよ」

「お主にはここでサバイバルをしてもらう」


 例の女が突然現れる。


「へ〜、死なないように?」


「そうじゃ、お主が生き抜く術を磨くための訓練じゃ」


 女は腕を組みニヤリと笑う。


「はあ?ふざけんな!」


「まずはこれを見るのじゃ」


 そう言い女は一冊の本を渡す。タイトルは「最初ゼロから教えるサバイバルの知恵/作者・八尾ナナ」とある。


「誰の本ですか」


「妾が今書いたのじゃ。どうじゃすごいじゃろ!」


こいつ、八尾ナナって名前なのか。


「なるほど」


「お主、何故そんなに冷たい?」


「そりゃあ拉致した犯人に言われたくないですね」


「ぐぬぬ、確かに」


 悔しげに歯ぎしりをする。


「でも何の為にこんな事を?別にここまでしなくても情報インストールすれば良いじゃないですか」


「お主、分かっておらんなあ。確かにインストールは簡単じゃが、経験というものが大切じゃ。その点この本なら、実際に使って学べるじゃろう」


「……なるほど?」


「という訳で、早速はじめるぞ。お主の持ち物は、その本のみ。あとは現地調達じゃ。期間は30日。死んだらやり直しじゃ。それでは……スタートじゃ!!!」


 こうして有無を言わさず、俺の地獄の3か月が始まるのであった。

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